船戸与一著。徳間書店刊。全2巻。
まだ上巻。
鳥羽・伏見の戦いで敗北した幕府側の会津、仙台など東北・北陸の諸藩と、薩摩・長州を中心とした倒幕軍との戦いを、長州の間諜・物部春介、会津藩の間垣右近、長岡藩の元博徒・布袋の虎蔵の3人の視点で描く。
こういう多角的な視点は船戸小説にはよくある話です。それが「龍馬伝」とか「燃えよ剣」みたいに一方からの視点じゃないので、スケールの大きさ、ダイナミックさを感じさせます。
そこに加えて、侍ではない布袋の虎蔵という一般庶民の視点があることで、従来の侍を中心とした明治維新とは異なるおもしろさも味わわせてくれるわけです。
東北・北陸地方に攻め込んできた薩長軍との戦い。まだ、3人が絡み合うような関係にまで至ってませんが、下巻での展開が楽しみです。しかし、薩長軍の勝ちという歴史はわかっているので、そこら辺の会津側の悲劇とかをどう描いてくれるのか、心情的にはわしも親が東北の人間なもんで会津とかに親近感を覚えちゃうものですから、特に会津藩士の間垣右近とその周辺が気になるのでした。
しかし、図書館に下巻が置いてなかったので、つなぎに「蝦夷地別件」を読む。こっちはもっと前のアイヌの反乱というか、国後・目梨の叛乱を扱ってます。アイヌたちの敗北後の展開が重い。重苦しい。主要人物の1人で、もっとも若々しかったハルナフリの変貌には胸が痛みます。
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