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坂口尚著。講談社漫画文庫刊。全5巻。

サブタイトルは「解放編」です。タイトルのとおり、ドイツの敗北で戦争が終わり、ユーゴ全土が解放されます。しかしこの物語で描かれるのは第1巻でも書きましたがユーゴスラビア解放のカタルシスではなく、戦争が終わって解放されたはずなので、互いに憎しみ合うことを止めない人間の醜い姿であり、そこに疑問を抱き続けるクリロです。

パルチザン本隊とはぐれてしまったクリロたちの隊は食糧も武器も乏しくなっていくなか、本隊に合流しようと放浪します。この隊を率いるバルゴというおっさんが筋金入りの軍人なんですが、何か日本軍の駄目上官にありそうな威勢のいいことばかり言うし、本人も戦い大好きだけど、基本、部下を死なせてしまうような無能って感じの描かれ方で、歴戦の兵士であるブランコと対照的です。ただ、クリロやイザークたち迷える若者から見るとまるで決して倒れない岩か大木のようなブランコも、彼らの発する疑問で自身の信念がぐらついていることを明かしますが、それでも最後までその確固たる表情が変わることはなく、でも最期まで描かれることもありません。途中で戦死したのか、無事に戦後まで生き延びていてほしいものですが。
そしてクリロはそのバルゴ隊ともはぐれてしまい、ブランコと思しき人影の「世界中で たった一人だろうと 否(ノー)なら否(ノー)と いいつづけろ 真(ほんとう)の戦士になれ!」という言葉を最後に、物語は戦後に移ります。

たぶん、ここがこの話を何度も読み返して、どうして著者がクリロやフィーの戦いを最後まで描ききらず、でも2人とも無事に故郷に帰り(クリロは足を負傷していますが)、再会するところで占めたのか、そこがわからなくて、また読ませるんだろうと思ったりしました。

で、今回は、クリロやフィーの戦いを最後まで描ききらないのは、著者がこの物語で描こうとしたのは、そういう英雄的な行為ではなかったからではないかと思います。それよりも世界の縮図のような多民族・多宗教国家であるユーゴスラビアという日本では馴染みのない国に、人間はなぜ戦うのか、なぜ争わずにいられないのか、なぜ憎み合うのかという普遍的なテーマと問いかけがあるからこそ、それを10代前半(1941年の開戦直前の時点でフィーが14歳なのでクリロも同い年)から10代後半という、もっとも多感な時期に戦争に巻き込まれてしまったクリロとフィーという2人の主人公によってこの荒波を乗り越えさせたかったのかなとか、いろいろと考えてみるわけなのですが、まだはっきりした答えは出そうにありません。

たいがいの漫画が一読したら投げ捨てられてしまう昨今、こうして何度も読ませる力を持った今作は間違いなく名作と言っていいのだと思います。

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