監督:モフセン=マフマルバフ
出演:大統領(ミシャ=ゴミアシュウィリ)、その孫(ダチ=オルウェラシュウィリ)、売春婦(ラ=シュキタスヴィリ)、歌手の政治犯(グジャ=ブルデュリ)、理髪師(ズラ=ベガリシュビヴィリ)、護衛(ラシャ=ラミシュヴィリ)、愛に生きる政治犯(ソン=クヴェデリゼ)、寛大な政治犯(ダト=ベシタイシュウィリ)、ほか
グルジア・フランス・イギリス・ドイツ、2014年
「
カンダハール」「
パンと植木鉢」「
サイクリスト」「
ギャベ」「
行商人」「
サイレンス」と、観てきたイランの巨匠モフセン=マフマルバフ監督の最新作です。何でもグルジア(公式サイトで「ジョージア」って書いてあるんだけどジョージアって国はないのでグルジアの間違いではないのか。国際感覚のなさを露呈していて恥ずかしいぞ)に亡命されたそうで、エンド・クレジットで「
ブラックボード」を撮った娘さんのお名前を発見したのでご家族一緒ならばいいと思いました。「
私が女になった日」の奥様の名前は覚えてなかったんで確認できなかったのが無念ですが…
とある独裁国家。孫に町中の灯りをつけたり消したりさせて遊ばせ、権力を実感させていた大統領だったが、そのまま、暴動が起こり、彼はひとまず妻と娘たちを国外に逃がす。本当は孫も逃がしたかったが、おもちゃと遊び相手のマリアにこだわった少年は祖父と残ることを選んだのだ。だが、暴動は革命に発展し、大統領は独裁者として追われる身となってしまう。2人の護衛と逃げ出した大統領だったが、1人が撃たれ、もう1人は孫に小便をさせているあいだに逃げ出してしまう。貧しい散髪屋から衣服を奪い取り、大統領と孫の逃亡の旅が始まった。ギターを盗んで旅芸人に扮した2人だったが、それは大統領がこの国でなした悪政を見つめ直す旅ともなった…。
途中がちょっとだれました。居眠りぶっこくほどではありませんでしたが。まぁ、エピソード的には逃げる→逃げた先で国民の貧窮ぶりを見せられ、それが自分のしたことの結果だと知らされるというのが繰り返されるので、ちょっと退屈でした。
それががぜん、釈放されたばかりの政治犯たちと逃げる段になるとスリリングな展開になります。大統領の孫は、実はテロリストに殺された息子夫婦の子どもで、両親の死を孫には伏せています。ただ大統領は、その報復にテロリストたちを処刑させたのですが、釈放された政治犯の1人が、その事件に関わっていたことをともに旅するなかで知ってしまうのです。自分は大統領だと名乗り、殺人者に報復するかという妄想が入りますが、大統領はそうしません。なぜなら、自分が罪人であることを、この時点ではすでに自覚しているからです。そのために大勢の人が苦しみ、兵士たちはさらに国民を苦しめている。そのことに気づいたからです。
ラスト、ついに大統領は見つかってしまい、孫と2人で囚われます。自分の息子が殺された報復に「大統領の目の前で孫を殺して苦しませて死なせろ」と叫ぶ女性。ここら辺の展開は手前味噌ですが、自作「
醜きもの、汝の名は」を思い出しました。
報復に報復を重ねても人は決して幸せにはなれない。
それでも
ヒロヒトだけは日本人自らの手で吊さなければならなかったと思います。決して安穏と死なしちゃいけなかったと思います。
たんぽこ通信 映画五十音リスト
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