坂口尚著。講談社漫画文庫刊。全5巻。
「抵抗編」とサブタイトルがついてます。
前巻のラストでイヴァンに殺されかけた(実際には殺すふりだけだったことが通しで読んでくとわかるんですが)クリロはザグレブの町から放浪して、ユダヤ人のイザークという少年と出会います。彼は以後、クリロとともにパルチザン、共産党のパルチザンへと合流していき、戦うのですが、他の登場人物同様、最後まで描かれることはありません。この巻ではまだユダヤの教えに則って戦う=人殺しを忌避しているのですが、パルチザンに合流し、銃も持ったからにはそういうわけにはいかなくなっていくようで最終的には人を殺してしまいます。ラストまで、そのことに疑問を抱き続け、最終的には故郷に帰り、両親やフィーとも再会するクリロとは対照的です。つまり、両親にもフィーにも再会できなかったクリロ? 家族はすでに強制収容所、あるいは絶滅収容所に送り込まれており、再会も望めませんが。
そして、クリロを探すブランコはイヴァンの目的(二重スパイ)を知っているようで、兄の裏切りを罵るクリロに理解を求めますが詳しくは語りません。この「詳しくは語らないんだけれど事情を知っている」という辺りがもろにたきがはの好みでありまして、そういや、「
Gガンダム」のアルゴ=ガルスキーもそういう多くを語らないキャラで、それでドモンよりもチボデーよりもサイ・サイシーよりもジョルジュよりもアルゴが上なんだといまさら気づきました。要するにそういうキャラです。
アルゴ ↓ 超珍しい笑顔
前巻でマイスナー大佐に引き取られ、妹そっくりの格好をさせられているフィーは、偽りの生活に耐えられず、車に飛び込みます。結果、視力を失ってしまいますが、手術もしてもらえるという待遇なので、次巻で治ります。ただ、彼女が車に飛び込んで自殺を図ったことで、マイスナーはフィーに妹の面影を見出すことを辞めていくようになり、最終的に彼女は強制収容所に戻ることになります。ここら辺、実際に戦っていて、命の危険はあるはずなのだけれど、強制収容所の死亡率も勝るとも劣らぬはずで、ただの少女に見えるフィーの勇気というのはあるいはクリロよりも凄いものかもしれません。わしがダブル主人公と見なす由縁です。
ブランコと行動をともにしていたイヴァンの恋人のミルカが、クリロからイヴァンに裏切られたと言われてパルチザンを抜け出したり、クリロと一時、一緒にいただけのミントがクリロを探していて侠気を発揮してたり、他の登場人物も波瀾万丈な展開です。
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