アントン=チェーホフ著。神西清訳。青空文庫刊。
吉田秋生さんの「櫻の園」という名作があります。毎年、春の創立祭で「桜の園」を演ずる女子校の、その演劇部に所属する女子高生たちの等身大の悩みとか惑いとかを描いた名作です。
で、その「櫻の園」は何度か読んだことがあるんですが(部長の志水由布子が男嫌いで倉田知世子に好意を持っているという話が好きだった)、肝心要の「桜の園」を読んだことがありません。青空文庫のデータを適当にダウンロードしていた時にこれが目に入りまして、読んでみたのでした。
チェーホフ最晩年の喜劇だそうなんですが、没落した貴族というのは笑いのネタになったのだろうか…。
借金のかたに長年住んでいた屋敷、つまりこれが桜の園を手放さなければならなくなった貴族一家、女主人、その兄、女主人の娘と養女、その家に仕える召使いたち、女主人と交流のある商人、家庭教師として事故死した女主人の息子に教えていた万年大学生とかが登場して、女主人の帰還からついに屋敷を手放してパリに発つまでを描いた演劇ですが、そのせいで台本だったわけか…
Wikiによると「演劇革命を起した。一に、主人公という考え方を舞台から追放した。二に主題という偉そうなものと絶縁した。三に筋立ての作り方を変えた(by井上ひさし)」だそうで、確かにこの話、主人公らしい主人公がおらず、群像劇と読めます。いささか女主人に重点が置かれてる感じでしたが、話的にはしょうがないか。そしてテーマがない。というか、とある没落貴族の日常みたいな感じで大した事件も起こらず、家屋敷を手放すのはそれなりの事件ではありますが、事件といったら、せいぜいそんなもので、特に大団円とかにもならないので、最後は登場人物が離散しちゃうし、そういう流れはおもしろいと思いました。
ただ、たきがはは基本的に派手好きなんで、二度三度と読み返すことはないと思いますが、自分の知らない世界というのはいつでも楽しいものです。
青空文庫のアプリは電池の消耗が地味なので長時間移動とかには良かったりしますが、飛行機の中で読めないのが難点ですな。
読むものがそろそろなくなってきたんで、またダウンロードしておこう。
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