綾辻行人原作。佐々木倫子画。小学館IKKI COMIX刊。全2巻。
「
オリエント急行殺人事件」と思わせておいて、の大がかりなトリックがおもしろいミステリです。
なぜか列車嫌いの母のために一度も電車に乗ったことのない沖縄の女子高校生・空海(そらみ)。母も、パイロットだった父も失い、天涯孤独の身となった空海の前に母方の祖父の代理だという中在家弁護士が現れ、空海を北海道へ誘う。稚瀬布(ちせっぷ)発、月館(つきだて)行きの寝台列車・幻夜号に乗り込んだ空海を待っていたのは凄惨な殺人事件であった…。
というわけで、大元のトリックというかネタを書いちゃうとおもしろみが半減どころか9割方減じるので書かないでおきます。
あとは、あんまり共感できないテツ(鉄道マニア)たちの濃ゆさと、なにしろ列車に馴染みのない空海の戸惑いと、いきなり6人(5人が判明するのは下巻でですが)も殺されちゃった殺人事件の謎解きというか、探偵らしい探偵が初っぱなで殺されちゃってるので、なぜか空海が謎解きしちゃうというあたりを楽しむ感じです。
ただ、事件は凄惨なんですが、なにしろ作画が「動物のお医者さん」や「
おたんこナース」の佐々木倫子さんのため、最初から最後まですっとぼけ感が漂ってしまいまして、そこに加えて濃ゆいテツ5人のキャラクター造型なんかもすっとぼけ感に拍車を加えた感じで、それほど怖い感じではなく、むしろあっさりテイストです。
終盤、空海の祖父の十蔵の屋敷を探してまわる空海たちが「上目名(かみめな)」駅の看板を発見するシーンがあるんですが、筒井百々子さんの「1スウの銅貨」という短編集に載ってた「雲の機関車」という短編で、主人公のノンが時刻表を見ながら探してた駅が上目名駅で、筒井さんの意外な博識さを思ったりしました。ちなみにたきがはは、この話でC57(しごなな)の愛称が「貴婦人」ということを覚えたのでした。
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