澤田愛子著。創元社刊。
たきがはのこだわりジャンル・ホロコーストものです。副題に「日本人が聴いたホロコースト生還者の証言」とあるように、圧倒的に翻訳物の多いホロコーストものとしては珍しい国産。
最近、twitterで、「ガス室がない」という驚きの発言を聞きました。その根拠が「
西岡昌紀の説を信じる」というのですから、開いた口がふさがりませんでした。そう言えば、それまでずっと気にはなってたんだけど見て見ぬふりっていうか、そんなに大げさに考えていなかったんですけど、その人のツィートで時々「ユダヤ人の世界的謀略」ってたぐいが出てきてたんですよね。ああ、それはこういうことだったんだな〜と思って、その人をフォローするのをやめました。わしはフォローするのもけっこう挨拶なしにフォローして、気に入らなかったらフォローを外す奴なんですけど、これは聞き捨てならない話だと思って、急にその人がガンジーの言葉を引き合いに出して世界平和を訴えるのがうさんくさく思えるようになってフォローを外したわけでした。
そうしたら、また別の人が自分も「ガス室がなかったと思ってる」と言い出しまして、そのくせ、わしが議論をふっかけようとすると「デリケートな話題だから」とか言って逃げるんだよね〜 あなたが口を挟まなければ良かったんじゃないですか。勝手に口を挟んでおいて、わしが返答すると何で逃げるのよ。しかも「わしはガス室があったと信じているし、自分はガス室がなかったと思っている。それでいいじゃないか」なんて言われて、もう、相手が逃げ腰になってるし、下手な奴を引っ張り込む羽目になるのもやだし、わしもそれで引っ込めたんだけど、ただ、何度かツィートをやりとりしていて、その人がどうして「ガス室はなかった」なんて言い出すようになったのか根拠を知りたいとツィートしたら、やっぱり一次資料(ホロコーストサバイバーの証言とか)だっていうんですよね。でもタイトルは覚えてないと。しかも「ガス室はなかった」と明確に言っているわけじゃないと。わしも悔しいので、どんな証言に当たったら、そんなことを信じるようになるのか知りたいと思いまして、この本を手に取ったわけなのでした。
しかし、その時は言うのをやめちゃったけど、ヒロシマ・ナガサキに原爆が落とされたことが誰にも否定し得ない事実であるように、ナチスの作った収容所のガス室で何百万というユダヤ人、ロマ、ほか大勢の人びとが殺されたことは絶対に動かしようがない事実で、それはたとえば神のように「あなたはいないと思っていて、わたしはいると思っている。それでいい」というレベルの代物ではないのだと思いました。
そして、ついでにもう一つ思い出したんだけど、前に「
ホロコースト大事典」を読んだ時に、「
チョムスキー9・11」のチョムスキー博士が、イスラエル憎さのあまり、ホロコースト否定論者を擁護したと。ユダヤ人の陰謀などと言い出した人は同じ心理なのかなぁと思ったのですな。
でも、わしもはっきり言ってイスラエル嫌いだし、
イスラエルに店舗出そうっていう無印良品不買運動やってるけど、ホロコーストの問題と現在のイスラエルという国家を一緒くたにするのはどうかと思う。
と思いながら読んでいたのですが、この本の中でインタビューされているサバイバーって、全員イスラエル在住なんだよね。だからイスラエルに対して「国を守りたい」とか「国を守るのは当然」って言葉は出ても、パレスチナの人びとに対して、自分たちの国がしていることのひどさを批判する声なんか絶対に出ないわけ。日本という安全な国に住んでいて、とりあえずホロコーストの心配もないわしが言うのもどうかと思うのですが、でもやっぱり、今のイスラエルはかつてのナチスにも恥じないひどい国家だと思うのです。
でも、そことここは切り離したい。ホロコーストという未曾有の災厄を被ったユダヤ人がイスラエルという国でパレスチナの人びとになしている非道さは一直線につながっているのかもしれないけれど、つながっているんだろうけれど、だからといってイスラエルを否定するあまり、ホロコーストも否定する、ガス室もなかったことにはわしはできないと思う。同じように南京大虐殺もポル・ポトの虐殺も、原爆同様、人類に対する犯罪として決して否定できない。決してなかったことになどできない。
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