監督:伊藤孝司
見たところ:横浜シネマジャック&ベティ
2009年、日本
広島と長崎で被爆した朝鮮人は合わせて7万人ほどいるという。しかし、国交のない北朝鮮の被爆者約4000人ほどが被爆者として認められることもなく暮らしているそうだ。
本作は、そんな在北朝鮮被爆者の1人、3歳の時に広島に入り、残留放射能で被爆してしまった李桂先(名前は「ケソン」さん)さんを追ったドキュメンタリーである。
公開中の映画なので続きにしまっておきます。
3歳の時なので桂先さんに記憶はなく、ともに被爆した母からも被爆した事実を知らされないまま、桂先さんは建国間近の北朝鮮に渡り、ピョンヤンに住む。しかし、戦後65年経っても日本とのあいだに国交は樹立されることなく、逆に拉致被害者や北朝鮮の核開発問題などで日朝関係は悪化、1990年代には北朝鮮を訪れていた両親も来られなくなってしまう。しかも北朝鮮を訪れた母親から自分が被爆者だと知らされた桂先さんは体調の悪化を訴えるようになり、被爆者手帳を受け取るために自力で日本に来ることもできなくなっていた。ラストシーンで訥々と母に会いたいと訴える桂先さん。決して雄弁ではないだけに、その心からの訴え、9分もの長廻しがこちらの心にすんなりと届く。
ただ、やはり50年以上も北朝鮮で暮らしている人なので、話の端々に「将軍様」という現政権を肯定する言葉が登場し、日本人として聞き逃せないと感じる。それに「
クロッシング」を見た後だけに、あちらはフィクションとはいえ、桂先さんとの格差が気になってしまうのも事実。桂先さんの家を見ても、物が少なく、決して裕福とは言えないが、北朝鮮ではかなり医療は優遇されている方と思われ、結核で死んだヨンハと比較した時に、この待遇の差はどこから来るのかと疑わずにいられない。
おそらく、北朝鮮にとり、被爆者は純粋な日帝の被害者であるから優遇するけれど、ヨンハのような存在は現政権を否定するものだから無視するのだろうと思うんである。どちらがましと言えるわけでもないのだけれど、この問題の根深さにがく然としてしまうのである。
YouTubeに予告編があったので貼っておくなり。
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