山本周五郎著。新潮文庫刊。
表題作のほか、「ゆだん大敵」「契りきぬ」「はたし状」「貧窮問答」「初夜」「古今集巻之五」「燕」「榎物語」の短編を収めた短編集。
「ゆだん大敵」はちょっと風変わりなタッチの侍の奉公とは、を描いた秀作。
「契りきぬ」は娼婦仲間の戯れが恋に発展してしまった娼婦が、一子をなしながらも男のもとを去っていく岡町物。
「はたし状」は無二の親友に許嫁を取られた思った男の、誤解が解けるまでを描いた友情物。
「貧窮問答」は「泥棒と若殿」にも似た感じの話で貧窮する若殿に一日だけ奉公に行った浪人が、その人柄に魅せられ、将来を誓い合った女まで捨てて若殿と一緒になっちゃう話。
「初夜」は藩政を独裁的に操る藩主の側近を斬った親友の切腹を看取ることになった若き中老が、ことを丸く収め、親友の妹とめでたく初夜を迎える話。
「四日のあやめ」は、武家の御法度である喧嘩の助太刀の頼みを夫にとりつがなかった妻のために、夫が藩内での立場を難しくするが、人間的にも成長していく夫婦物。
「古今集巻之五」は妻に自殺された男が身を持ち崩すも、その事情を知り、立ち直るまでを妻の遺した古今集巻之五を小道具に描いた話。
「燕」は年寄りたちの回顧と、若侍たちの恋バナと発憤が並行に綴られた話。
「榎物語」は、冴えない庄屋の娘が将来を誓い合った下働きの若者との再会を願い、村ごと山津波に呑まれて家族も失って、生家に立つ榎に託した話。
と、わりと色恋が中心の冊となりました。
「ゆだん大敵」がなかなかおもしろかったです。
表題作の「四日のあやめ」は、女主人公のことを実兄が「四日のあやめだ」と評するところから来ているんですが、まだ「幼い」とか「若々しい」というたとえなんでしょうか?
「榎物語」は、ちょっと「
ハウルの動く城」を思い出しました。さえないと言われて、実際に暗い感じに描かれてる主人公が、家族を失ってから急に魅力的になったというのはどういうことなんだ? 足枷が外れた感じ? 両親が最期に呼んだことで長年のコンプレックスもなくなった感じ?
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