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されど平穏な日々

日々のつぶやきと読んだ本と見た映像について気まぐれに語るブログ。Web拍手のメッセージへのレスもここ。「Gガンダム」と「ジャイアントロボ」への熱い語りはオタク度Maxにつき、取り扱い注意! 諸事情により、コメントは管理人が操作しないと反映されません。時々、サイトの更新情報など。

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ヒトラーへの285枚の葉書

監督:ヴァンサン・ ペレーズ
出演:オットー=クヴァンゲル(ブレンダン・グリーソン)、アンナ=クヴァンゲル(エマ・トンプソン)、ダニエル=ブリュール(エッシャリヒ警部)、ほか
見たところ:横浜シネマジャック&ベティ
2016年、ドイツ・フランス・イギリス

原題「ベルリンに一人死す(リンク先は小説の感想)」の映画化ですが、今年いちばんの駄作だったので感想を書き殴っておきます。

駄目だった理由その1
主人公であるオットー=クヴァンゲル氏の原作のキャラからの乖離。
薄い唇と冷たい目が鳥を思わせる、鋭い顔つきの(2つ引用がありますがイタリック体は原作の訳からの引用です)」と形容されたオットーさんのキャラとは似ても似つかぬキャスティングを知った時にいや〜な予感がしたんですが大当たり。
原作の魅力はオットーさんの「他人に関わりを持たず、ただ働き、一人静かに生きることにしか興味のなかった(装飾がない引用はわしのブログからです)」人物像がヒトラーを訴える葉書を書くようになり、死刑になった変遷にもあるわけです。
だから、とってつけたようなオットーとアンナの夫婦愛なんか蛇足なんですよ。それ、オットーさんのキャラクターと違うわけなんですよ。
職場でも孤独なオットーさんは腕のいい元家具職人でしたが、職場の方針の転換だったかナチの命令だったか細かいところは忘れましたが、現在は棺桶を作らされています。それでも文句ひとつ言わずに黙々と働くオットーさんのキャラクターは、どこか近寄りがたい職人気質に溢れる人物だったはず。
映画での頼られる職工長でもいいんですけど、そういうキャラクターじゃないよねと。
言いたい。声を大にして言いたい。

駄目だった理由その2
タイトルにもなった「一人死す」が描かれない
わしがこの小説を絶賛する理由は、オットーさんの魅力に参っちゃったせいもあるんですが、そういう意味ではこっちが一番の方がいいような気もするんですが、ラスト、孤独に生きてきて、家族以外とほとんど話さなかったオットーさんの最初で最後の友人となったライヒハルト博士の次の言葉でした。
自分のためになります。死の瞬間まで、自分はまっとうな人間として行動したのだと感じることができますからね。そして、ドイツ国民の役にも立ちます。聖書に書かれているとおり、彼らは正しき者ゆえに救われるだろうからです。ねえ、クヴァンゲルさん、『これこれのことをせよ、これこれの計画を実行に移せ』と私たちに言ってくれる男がいたら、そのほうがもちろん100倍もよかったでしょう。でも、もしそんな男がドイツにいたとしたら、1933年にナチスは政権を掌握してはいなかったでしょう。だから、私たちは一人一人別々に行動するしかなかった。そして、一人一人捕らえられ、誰もが一人で死んでいかなければなりません。でも、だからといって、クヴァンゲルさん、私たちは独りぼっちではありません。だからといって、私たちの死は犬死にではありません。この世で起きることに無駄なことは1つもありません。そして、私たちは正義のために暴力と戦っているのだから、最後には私たちが勝利者となるのです
ところが映画にはライヒハルト博士は出てきません。そもそもアンナの出番が多すぎます。というか、キャスティングでアンナを初っぱなに書くという時点で何をか況んやです。アンナはオットーさんと一緒に戦った嫁で、オットーさんにとってはきっと息子と同じくらい大切な人物だったのですが、それでも主役はオットーさんなのです。
ライヒハルト博士が出てこないので、当然、この台詞もまるっとカットです。でも、それでは駄目なのです。この小説の主題はここ、ライヒハルト博士の台詞にあるんです。
こんな脚本書きやがって、ファラダさんの墓前で土下座して謝ってこいな心境です。ファラダさんの小説を原作として売り出す必要性は何もないのです。ファラダさんの小説だって実話に基づいているんですから、その実話を使えばいいんです。手抜きだこんちくしょう。

駄目だった理由その3
アンナ出しゃばりすぎ
その2でも書きました。オットーさんにとってアンナが大事なパートナーであっても主体はオットーさんにあるのです。

駄目だった理由その4
余計なシーン多すぎ
冒頭、クヴァンゲル夫妻にこのような行動を取らせるきっかけとなったハンス=クヴァンゲルの戦死を5分くらい時間をかけて描きます。
要りません。
この時点で駄作の予感がしましたが、予想どおりでした。
あと、ラスト、オットーさんを取り調べた警官の自殺も要りません。「ジョン・ラーベ〜南京のシンドラー〜」でも書きましたが(似たようなくそみそな感想ですが)、ナチにも心ある人はいたみたいなの蛇足だし。

ほかにも別の映画レビューサイトで言われてましたが、しゃべってる言葉が英語なのに書いてるのはドイツ語っていうのは上の4つほど駄目だとも思いませんでしたが整合性がないのは単に格好悪いと思いました。

というわけで今年最低の映画と認定します。異論は認めません。
と思ったら、ほかにも最低と認定した映画がごろごろと…

たんぽこ通信 映画五十音リスト

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