ヴィクトール=フランクル著。山田邦男訳。春秋社刊。
「夜と霧」で世界的に有名なユダヤ系オーストリアの精神医学博士の唯一の自伝です。
わりと詳細なご両親のことから4、5歳で「医者になる」と決心したこととか、学生時代のこととかが豊富な写真も交えて綴られてまして読み応えがありました。何よりフランクル博士の文は訳が入っているのは否めませんが、小難しい専門用語のオンパレードではないのですらすらと読めました。
驚いたのは子どもの頃から「医者になる」という決心をして、その道に進んだ成熟ぶりです。頭がいい人というのはやはり違うもんだなぁと自分を振り返って、しみじみとしてしまいました。
また元ナチスや戦後のドイツに対して共同責任という考え方を捨てるよう一貫して主張される姿は収容所からの生還者ならではの説得力に満ちていました。
一方で自分一人だけはアメリカのビザをもらって強制収容所に行かなくても良かったけれど、その機会を捨てて年老いたご両親とともに行くことを選んだことを誰にも非難させないという信念も、いざ、自分が同じ立場に立たされたらどうするかと考えずにいられない昨今、考えさせられました。実際のところ、フランクル博士とご両親が強制連行されたのは強制収容所のなかでも特異な位置にあるテレージエンシュタット強制収容所(ナチスが唯一、外部に公開していた)だったわけですが、だからこそ高齢のご両親もすぐにガス室には送られないで済んだのでしょうけど、最終的にはお父さんは博士自身の手によって安楽死させられ、お母さんはテレージエンシュタット強制収容所からアウシュヴィッツ絶滅収容所に送られ、ガス室にて殺されたそうなので何百万人ものユダヤ人やロマほかを襲った死からは逃れられなかったわけです。
あと、精神病の方たちがナチスによって安楽死させられていた頃、フランクル博士らによって数少ない抵抗もあった(精神病患者たちをユダヤ人専門の病院に転院させたとか)ことは初めて知りました。
フランクル博士の著作、真面目に読んだのは「夜と霧」ぐらいなので、もっと読んでみようと思いました。
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