ジョージ秋山著。青林工藝舎刊。
同時収録が「銭ゲバの娘プーコ」なんですけど、「銭ゲバ」がまだ届いてないんで「アシュラ 完結編」だけ読みました。
アシュラというのは、おそらく中世(平安〜室町ぐらい)ごろ、日本中が飢饉のために餓えていた時代に、ある狂女から生まれた赤ん坊が、母に殺されそうになりつつ生き延び、いつか「アシュラ」と呼ばれるようになり、人の心を失ったアシュラの放浪にからめて、苦しむ庶民の姿を描いた超問題作です。
1970年代の「少年マガジン」は凄かったんだよ、こんな人肉を食べる漫画が連載されていたんだから。衝撃的な内容でしたが、途中で連載が唐突な終わり方をし、アシュラが生みの母と再会し、その死に立ち会うもラストは「生まれてこない方が良かったのに」と、全編、この基調に包まれている漫画でして、作者はアシュラの持つ獣性をこれでもかこれでもかと描き続けたわけです。
その「アシュラ」が完結してるとなると、読みたいのが人情というもの、「銭ゲバ」も注文しましたが、こっちはついでです。てへ
未読の方のために、ネタバレは伏せておきます。
「アシュラ」において、欲望の赴くままに人を殺したアシュラにも、数少ないですが人間扱いし、ふれあった人びとがいました。そのうちの1人、畜生法師は、餓えていれば人肉さえも喰らい、食事のために人も殺すアシュラに、己の左腕を切り落とし、喰えと迫った人物です。
一度は都に行き、さらなる地獄を見たアシュラが、完結編では畜生法師や実の父親の住む地方に戻ってくるところから始まります。しかし、畜生法師の片腕を差し出した説得で、一度は人肉を食べることを止め、人を殺すことも止めたアシュラでしたが、たった一杯の粥がもらえなかったために、またしても親子3人を殺しての帰還でした。
畜生法師は、多くの庶民が飢餓に苦しみ、アシュラの父の支配する荘園で奴隷のように働かされる人びとを救おうとしますが、却ってアシュラの父に囚われてしまいます。
そして1ヶ月も食事を与えられなかった上、猪の肉を人肉と偽って与えられた法師は、とうとう牢屋で餓死してしまうのでした。
その姿を見たアシュラは、以前、荘園で働いていた子どもたちのリーダー格だった七郎に再会し、ともに仏道に入ったところで物語は終わります。その七郎もまた、両思いだった娘と結ばれず、畜生法師に諭され、自身でその娘に諭していたのです。
「銭ゲバ」が主人公の自殺という終わり方をしつつ、蛇足の「娘」を描いたのとは対照的に、きれいにまとめたなぁという印象です。
[0回]
PR