去年行ったつもりでいたら、一昨年のことだった「
三重野杜夫の最期」の宇都純子さんの朗読会。今度はナガサキです。
満州で生まれ、両親の死によりナガサキの叔母夫婦に引き取られた下平作江さんとるりこさんの姉妹。運命の8月9日、原爆に遭い、家族を失った作江さんは妹、義理の姉(叔母の娘なので、本来は従姉)の息子と生き延び、いったんは親戚に別々に引き取られるものの、生き残った子どもたちだけで暮らすことにします。しかし原爆症のために妹の盲腸の手術がふさがらず、妹は列車に飛び込んで自殺してしまうのでした。作江さんは後を追うことを考えますが、恐ろしくて死ねず、今は生き延びて被曝の体験を語っているのだそうです。
やはり被曝の体験が生々しくて地獄としか言いようがないです。親のように育ててくれた叔母夫婦を失い、頼れる兄や姉も失った作江さん姉妹。親戚の家に別々に引き取られたものの、原爆症の発症のために妹と再会、ともに暮らすことになりましたが、いくら戦後の混乱のなかとはいえ、子どもだけで暮らすことがどれほど辛かったか、「はだしのゲン」を見ているとわかるのです。そして、「はだしのゲン」のなかにもゲンにとって姉同然の夏江が盲腸の手術を受けたけれど、傷口がなかなかふさがらなくて苦しむというシーンがありますが、作江さんの妹さんも同様の目に遭うのです。
ただ、時間的にここの流れがもうちょっととってもらえれば良かったと思うんですが、妹さんがいきなり「亡くなった時には18歳でした」になっちゃうんで、原爆が落とされてからの10年間をもっとやってほしかったなぁと思いました。そうしないと、どうして妹さんが自殺まで思い詰めてしまったのか、その流れがわかりづらかったので、せっかく原爆から生き延び、苦しい子どもたちだけの生活を10年間(は経ってないかもしれないんですが)を耐えたのに、なぜ死を選ばなければならなかったのか、盲腸だけの苦しさのためとも思いづらいので、もっと時間をとってほしかったと思います。
今回は音楽が最初と最後に入って、いい感じでした。前回のような朗読だけじゃなく、「空襲警報!」とか口調を変えたのも臨場感があって良かったと思います。それだけに原爆から妹の死への繋がりをもう少し丁寧にと思うんですが、下平さんの証言をもとにしているので、そもそも語られないところなのかもしれません。
長崎には一回行ったきりで、駆け足で如己堂と原爆資料館、平和記念公園を見学しただけなんで、また行きたいと思います。
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