監督:ディアオ=イーナン
出演:ジャン(リャオ=ファン)、ウー(グイ=ルンメイ)、リアン(ワン=シュエビン)、ロン・ロン(ワン=ジンチュン)、ほか
見たところ:横浜シネマ・ジャック&ベティ
中国、2014年
ベルリン映画祭で金熊賞と男優賞を受賞したのと新聞で評判が良かったので母と行ってきました。
妻に離縁状を叩きつけられたばかりの刑事ジャンは東北地方で起きた異様な殺人事件を担当するが、その容疑者となったリウ兄弟を見つけたところで撃ち合いになり、リウ兄弟は死亡、ジャンもその時に負った怪我がもとで退職する。それから5年後、とある工場の保安員として働くジャンは、かつての同僚ワンと偶然再会したことで、似たような殺人事件を追っていることを知り、退職した身でありながら、事件の解決にのめり込んでいく。やがてジャンは事件に関わる、5年前の被害者リアンの妻ウーを知って、彼女に惹かれていくが…。
いわゆるサスペンスのたぐいだと思うのですが、正直、説明不足な感じもあり、途中の筋がよく呑み込めませんでした。パンフレットを読んで、やっとウーが5年前の殺人と今回の殺人の双方に関わっていることがわかりましたが、容疑者っぽい女性に惹かれる元刑事というシチュエーションに、わしの好きなハードゴア・スリラー「
カル」を連想してしまいました。
・異様な殺人事件
・主人公は刑事、もしくは元刑事
・事件に深く関わるヒロイン
といった点が「カル」とどうもよく似ていて、比較するには、あちらは猟奇的な殺人と、その見せ方がわりと売りなので、全体的に地味な印象を受けたこの映画とはかなり異なると思うんですけど、だからパクリとは主張しませんけど、話の枝葉部分をぶった切って本筋だけを残すと、どうもよく似通った話だなぁと思うのが本音であります。
そして、地味と書いてしまいましたが、まぁ、何と言うか、地味な映画でした。主要な登場人物は上のキャスト4人+主役の元同僚ワン刑事なんですが、5年前の事件がけっこうさらっと流されてしまうので、よく覚えられないままに現在に移り、何か酒に溺れている主人公というのを理解しているうちに、刑事を退職しているのに、事件解決にのめり込んでいくというか、勝手に首を突っ込んでいったのに、いつの間にかヒロインとつき合っているという流れがつまらなかったです。
画面が地味というか、母ははっきりと「汚い」と言いましたが、実は舞台が大都市・哈爾浜なのに、どうも地方都市で、車のナンバープレートが「黒」なんで、黒竜江省らしいと推測ぐらいはわしもできますんで、そうすると東北地方(パンフにも公式サイトにも「華北地方」と書いてあるのですが、哈爾浜がある黒竜江省は東北地方であって、華北地方は北京とか天津が該当して、もうちっと南の方のはずなんで、ここ、間違いだと思うんですが…)のどっかの都市かと思っていたら、実は哈爾浜だったという落ちで、まぁ、大都市でもそういう汚いというか、地方都市の顔というのはあると思うんですけど、あんまり哈爾浜の意味なかったような気もしなくもないんですけど、そこはあんまり哈爾浜というのを打ち出していないので、まぁいいかと思ったりしましたが、パンフにも公式サイトにも「華北地方」と書いてあるのが、現在になってから、ずっと地面も凍ってるような寒々しい景色ばかりで、華北地方とは思えなかったので、そこら辺はちゃんと書いてほしかったなぁと思ったり。
あと、「カル」の方は先に見ていたし、主演のハン=ソッキュさんも存じ上げているし、ヒロインも同僚の刑事さんも別の映画で見ていたんで、わりとキャストがすんなり頭に入って話に集中できたという有利さは否めないとは思うのですが、盛り上がったシーンって、わし的にはワン刑事が容疑者にスケート靴でなぶり殺されるというところぐらいだったかもと思うくらい、展開にメリハリなくて(主役が酔っ払って工場に出社して、「いい加減に再婚しろ」とか言われて、工場で働く女性にセクハラするシーンは間違っても盛り上がるとは言いたくない)、スケートのシーンも間延びした印象で寒々しさだけが残り、真犯人が逮捕されてからもずるずると現場検証で、この映画の落としどころはどこやねんと思って見ていたもんで、退屈な映画だったなぁと思う次第。
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