監督:アイ=ウェイウェイ
見たところ:桜坂劇場
ドイツ、2017年
見たい映画が途切れたんで、興味を覚えてこちらに行ってみましたが、駄作とは言わないけど、正直なところ、金を払って見るべきでもなかったような…
タイトルから予想されるとおり、難民について描いた映画なんですけど、そこのところはわしも勉強不足なんで十分、勉強にはなったんですけど、難民がなぜ発生するのかという観点がまったくなく、人権主義の名において第二次世界大戦後に発足した難民条約に基づき、難民たちを受け入れてきた欧州ほかの地域が難民を受け入れない方向に転換し始めたのは記憶に新しいところであります。ただ、ろくに難民を受け入れていない日本人のわしが偉そうに言うことではないとは思いますが、かといってパレスチナ、シリア、クルド、レバノン、アフガニスタンといった中東諸国を皮切りにロヒンギャにしても何といいますか、その発端となった暴力行為、つまり内戦であったり戦争であったりしますが、そういう行為は決してその当事者の国だけで行われていることではないのは自明の理でありまして、つまり、イスラエルの軍事力を支えるアメリカという国があるようにシリアにちょっかいを出すアメリカ、ミャンマーの軍事政権と国家顧問となってから、ぼろぼろと粗が出ているアウンサンスーチーを支える西側諸国があるわけでして、言ってみれば、欧州に難民が向かっていることの大半の責任はやはり欧州にあるのではないかと思うのです。それを棚に上げて難民問題とか言っているのはどうなんだと思ったんですが、そこんところの突っ込みがなかったのはどうなのかと。
紛争などなければ、難民になる人はぐっと減るでしょう。そこを言わないで難民対策に四苦八苦する欧州なんて片手落ちじゃないんですかね。もう、それだけ言っていればいい時代じゃないですよね。
さらに難民を受け入れる様々な国を紹介し、キャンプを映し出すなかで、唯一、「人道主義」を唱えたヨルダンだけ映さなかったのは何でなんでしょうかね? 映せない事情があるんでしょうか? ヨルダンの王女が「自分たちの国は人道主義が第一」と強調してましたけど、失礼ながらヨルダンは小国です。日本よりさらに狭く、貧しい。中東では大国のトルコでさえ、難民を受け入れるのと引き換えに欧州から多額の援助を得ており、さらにそれが難民問題の解決には効果がないとか、公式の難民キャンプには国内の難民の10%しかいられないとか突っ込んでるわりにヨルダンの事情はどうなってんの?と思わざるを得ません。ヨルダンを持ち上げるなら、その理想的な難民の事情を描きなさいよ。褒めるだけ褒めておいて、実情を映さないなら、何かあると疑うのが筋ってもんです。少なくとも表に出せない事情があると思います。
そして、これは批判ではなくて日本の被災者と比べてびっくりしたんですけど、ドイツの難民たちが暮らしている空港の倉庫、理想的な住環境とは言えませんが、それ以下の被災者の現状はどうなのかと思って愕然としました。段ボールでプライベートな空間を仕切ることさえ稀で体育館に押し込められている人びとの姿を東日本大震災以来、日本中で見ます。日本では被災者の人権は欧州での難民にも劣るものなのだなぁと思いました。
始まって早々にヒューマン・ライツ・ウォッチとか出てきたり、紹介してるメディアは基本、欧米だけだったり、監督の立ち位置にいちいち疑問符がつきます。これでホワイトヘルメットなんか出てきたら決定的だなと思ってましたけど、さすがに出しませんでしたな。
現代の中国が理想的な国だとは言いません。ただ、中国を批判し、欧州を持ち上げる中国人という監督のスタンスは、欧州にとっては理想的な親欧派(半島での親日派的な)なんだろうなぁと思いました。
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