第二次世界大戦のエピソードはきれいにすっ飛ばされました。あらまぁ。原作の小説を読んだ時には、ケインとアベルが戦場ですれ違うシーンぐらいあった気がしたんですが。もっとも2人の銀行にしてもホテルにしてもアメリカが本拠地ですんで、戦争の影響はそれほどではないのでしょう。
シカゴにバロン・ホテルをオープンしたアベルは、その場でザフィアとの結婚を宣言する。やがてザフィアは女の子を産み、フロレンティナと名づけられるが、アベルがホテル王として成功すればするほど、ザフィアの気持ちはアベルから離れていくのだった。未亡人のケイトと結婚したケインも私生活は順風満帆とは言えなかった。親友のマシューを病気で失い、その父レスターも亡くなったからだ。だがレスターは死に際して、ケインをレスター銀行の頭取に推薦し、ケインは長年の夢であったレスター銀行とケイン&キャボット銀行を合併させ、全米一の大銀行を作る。ところが、マシューの妹のスーザンがレスター銀行の株を手放し、アベルに買われてしまう。また、新進の航空会社をケインが買うと、アベルはその株を100万株も買い入れる。話し合いたいとするケインに対し、アベルは復讐の機会を虎視眈々と狙っていると告げる。しかも母を死なせたオズボーンまで下院議員となってアベルと昵懇の仲になっているという。ケインはついに、アベルとの全面対決を決意するのだった。
アベルはまだケインを恨んでいます。今回はケインの比率がちょっと高く、リロイ氏を死に追いやった抵当権の問題も、ケインはもうちょっと穏便に事を運ぼうとしていたのだとわかるわけです。ですが、そのアベルにはケインが母の死の原因があると考えているオズボーンがくっついています。アベルの母アンと結婚する前も、いい年こいてまだ定職のないおっさんで、言うに事欠いて「まだ一つ所に身を落ち着けたくないんだ」とかなんとかかんとか。この話のなかでもいちばんうさんくさいおっさんです。しかしアベルという金づるを得たオズボーンは、出遭った頃は保険外交員だったのに市会議員に立候補、さらに下院議員と出世街道まっしぐらです。その上、アベルのホテルが生み出す利益も使い込んでいるようで、うさんくささに磨きがかかっております。さすがのアベルもオズボーンのいいなりに金を出すのを、今回の最後の方でそろそろやめにしそうな気配ですが、なにしろどっちもケインを恨む同士(オズボーンのは単なる逆恨みですが)、一度結ばれた絆はそう簡単に切れそうにありません。
ところが、2人のつながりを知ったケインもさすがにこれには我慢がなりません。とうとう弁護士のコーエンに「何でもいいから2人のやってることを洗い出せ」と指示、贈収賄から汚職から何でもありそうですネ。
一方、上の粗筋でもちょっと詳しく書きましたが、ケインもアベルも私生活ではとことん恵まれていないです。ケインは今回、ケイトと結婚してますが、親友を失い、その父も失います。また妹も、ケインと結婚するはずだったのにすっかりほされたもんで、へそを曲げて、持ち株をアベルに売ってしまいます。でも息子が生まれたようで、そこのところは今後の話で大きな役割を担うことになるでしょう。
アベルもザフィアと結婚したし、親友のジョージをニューヨークから呼び寄せておりますが、こっちも娘が生まれたところまでは良かったんだけど、ザフィアとの心は離れていく一方です。どうやら、上昇志向が極端に強いアベルと、いっそのこと普通の会社人間の旦那でも良さそうなザフィアとではまったく合うはずもなかったようです。メラニーのことといい、アベルは成功しているわりには女性の扱いはうまくなっていない模様です。
もっとも、離婚はしましたが、愛娘フロレンティナは引き取ることに成功したようで、原作ですと、この娘が主人公になって、アメリカ初の女性大統領になるまでを描いた「ロフノフスキ家の娘」なんて話もあったりしたようです。たきがはは「ケインとアベル」でおなかいっぱいになったんで、続編は読んでません。
社会的には成功したけれど、私生活ではいまいち恵まれているとは言いがたい2人、次回では子ども世代もクローズアップされてくるようです。
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