監督:ジャン=ルノワール
出演:マレシャル中尉(ジャン=ギャバン)、ド・ボアルデュー大尉(ピエール=フレネー)、エルザ(ディタ=パルロ)、ラウフェンシュタイン大尉(エリッヒ=フォン・シュトロハイム)、ローゼンタール中尉(マルセル=ダリオ)、カルティエ(ジュリアン=カレット)、ほか
見たところ:川崎市アートセンター
フランス、1937年
「
どん底」「
フレンチ・カンカン」のジャン=ルノワール監督が第一次世界大戦の西部戦線を背景にしたドイツ軍の将校専用の捕虜収容所を舞台に撮った反戦映画です。わしはジャン=ギャバンの若い頃の映画だっていうんで喜び勇んで見に行きました。そしたら同じ監督の「恋多き女」というのを3月から公開なんだそうで、こちらはイングリッド=バーグマンさん主演のロマンチックコメディなんで見に行こうと思ってます。
第一次世界大戦のフランスとドイツの戦いを背景に、ドイツ軍の捕虜となったフランス軍将校たちの収容所生活と脱走、フランス軍大尉とドイツ軍大尉の国境を越えた友情を描く。
このうち、ド・ボアルデュー大尉がフランス人の貴族で、ラウフェンシュタイン大尉がドイツ人の貴族で、この二人のあいだに友情が育まれるわけですが、ド・ボアルデュー大尉は捕虜、ラウフェンシュタイン大尉は収容所の司令官とまるで異なる立場にあるもので中盤、マレシャル中尉とローゼンタール中尉の脱走を助けるためにド・ボアルデュー大尉は犠牲になり、ラウフェンシュタイン大尉に撃たれて死んでしまいます。
また、マレシャル中尉とローゼンタール中尉の脱走してからが長く、ドイツの未亡人エルザに匿われた時は、この映画の落ちはどこなのかと思ってしまったほどでしたが、ラストはマレシャル中尉とローゼンタール中尉はドイツとスイスの国境を越えていくのでした。
第二次世界大戦と違って戦争といっても牧歌的な雰囲気で、そこは監督が敢えてしたんでしょうけど、戦闘シーンは描かれず、マレシャル中尉とド・ボアルデュー大尉も登場して飛行機で偵察に行くことになったら、もう次のシーンでは撃墜されてたりと徹底してます。舞台の大半は捕虜収容所なので脱走に失敗して撃ち殺された死者は登場しますし、ド・ボアルデュー大尉も最後は死んじゃってますけど、それだけに抑えた感じです。
またマレシャル中尉といい仲になるエルザが、夫も兄弟も皆、戦争で殺されて娘と二人で暮らす未亡人というのも監督の強い反戦メッセージを体現してます。マレシャルが「戦争が終わったら迎えに来るから一緒にパリで暮らそう」と言って、それでも戦場に戻っていかざるを得ない辺りなんかも。
さらにラスト、ついに国境を越えたマレシャル中尉とローゼンタール中尉をドイツ兵が「もうスイス領だ」と言って見逃す辺りは後のナチス・ドイツの描き方なんかを鑑みるにずいぶん紳士的だったりします。
この映画を見ると「
戦場にかける橋」での日本軍の捕虜になった将校への扱いの酷さというのがよくわかっちゃったりします。まぁ、味方に「生きて虜囚の辱めを受けず」とか教えちゃう世界でも例を見ないお馬鹿軍だったりしますから、ジュネーブ協定何それ美味しいの状態だったんでしょうけど、イギリス軍将校にとっちゃ、こうだったんだろうなと。
そこら辺も含めて、いろいろとおもしろい映画でした。ジャン=ギャバンは若造でもよし。わし的にはド・ボアルデュー大尉のが好きでした。
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