趙廷來著。伊學準監修。川村湊校閲。筒井真樹子、安岡明子、神谷丹路、川村亜子共訳。集英社刊。全10巻。
サブタイトルは「鴨緑江の苦い水」です。釜山(プサン)まで国軍を追い詰めた人民軍でしたが3ヶ月後、仁川(インチョン)への上陸作戦からアメリカの反撃が始まり、爆撃機による絨毯爆撃の効果もあって退却していくことになります。鴨緑江(アムノクガン)は朝鮮と中国(旧満州)との国境を流れる河で、人民軍はそこまで退却させられたのです。ただ、廉相鎮(ヨム=サンジン)たちはまた山に籠もるようになり、遊撃に戻ります。この巻で語られるのは人民軍の解放と挫折という感じで、ラストでは中国の人民解放軍が参戦してきます。
金範佑(キム=ボム)は途中まで共産党にも属さず、逃げ出しもせずでソウルにいますが、立場をはっきりしなくちゃいけなくなってきて、故郷に帰ろうとします。しかし、彼はアメリカ軍の反撃を予想しており、最終的にはアメリカに捕らえられて、通訳として働かされています。
彼の兄、金範俊(キム=ボムジュン)は満州で独立運動に携わっていましたが、人民軍の将校となって故郷に凱旋します。
廉相鎮たち共産党は農地改革を実施したりしましたが、納税前の調査でケチをつけてしまい、小作人たちに「強欲な日本人どもでさえしなかった」と言われるような米の粒まで数える公平さでそっぽを向かれて、アメリカ軍の反撃が始まって、退却することになります。なかなかうまくいかないものです。そこら辺の理由とか、小作人たちの心情とか、共産党がそういう策を取った理由とか、どちらの側からも書かれているんですが、難しいです。
そして、共産党の女性同盟とか青年同盟に加入した人たちが右翼の報復を恐れてともに山に籠もるようになり、その数はどっと増えました。外西(ウェソ)宅もパルチザンになって山ごもりだし、素花(ソファ)ちゃんも李知淑(イ=ジスク)先生も山へ。河大治(ハ=デジ)も夫婦揃って山へ。両親を恋しがる息子たちの様子が切ないです。
徐民永(ソ=ミニョン)はどうしたんだろう、そう言えば…。
朝鮮戦争は中国軍が加わってから、さらに3年ほど続くのですが、登場人物たちの運命はまだ二転三転しそうです。
[0回]
PR