趙廷來著。伊學準監修。川村湊校閲。筒井真樹子、安岡明子、神谷丹路、川村亜子共訳。集英社刊。全10巻。
サブタイトルは「骸骨の隊列」です。食糧事情の厳しいパルチザンのことかと思っていたらさにあらず。徴兵された新兵たちが必要な食事も与えられず、泊まるところもなく、戦場から戦場へ歩く様を描写したものでした。
中共軍の参戦と厳しい冬が来て、戦線は再び人民解放軍に有利になりますが、これが一時的なものであることはみんなわかってます。
その中で金範佑(キム=ボム)がアメリカ軍を脱走して人民解放軍に加わり、孫承旻(ソン=スンホ)がパルチザンとして経験を積んでいきます。1巻の頃には考えられなかった変貌ぶりです。
その一方で素花(ソファ)と河大治(ハ=デジ)の女房のドルモル宅は里に下り、筏橋には行かずに後方支援に働きますが、廉相九(ヨム=サング)の手先に発見され、逮捕されてしまいます。
また、満州まで行った李鶴松(イ=ハクスン)ら、「解放日報」の記者たちは人民解放軍がソウルを奪還したのでソウルに戻ってきますが、李鶴松の家族は行方不明となってしまっていました。そうそう、李鶴松は満州で鄭河燮(チョン=ハソプ)と出会いました。そういや平壌に行かされてたなぁ。こういう、別々に活動していた登場人物たちが出会うのは大河小説ならではの醍醐味ですね。
沈宰模(シム=ジェモ)は相変わらず不正を嫌う潔癖さで新兵の教育だったのがまた前線に送られたりしてます。彼を慕う順徳(スントク)という娘は彼を追いかけていった丹陽(タニャン)で待ちわびていますが、米兵の横暴さに巻き込まれそうになったりと大変です。
この巻では独立運動に加わった長男、範俊(ボムジュン)や学徒兵として出陣した次男、範佑を温かく、広い眼差しで見守ってきた筏橋(ボルギョ)唯一の心ある地主だった父、金思鏞(キム=サヨン)が亡くなり、廉相鎮(ヨム=サンジン)は範俊とともに遠くから野辺送りを見守るのでした。
そしてパルチザンたちに回帰熱が流行り、大勢の人が亡くなりますが、これは米軍が病原菌を撒いたのではないかと疑われてます。まぁ、やるでしょう。なにしろ米軍には731部隊の幹部をその情報と引き換えに戦犯にしないという取引を行った罪状がありますからね。回帰熱には孫承旻や筏橋の小作人だった金福東(キム=ボクトン)らがかかってしまいます。
1953年の休戦に向けて、粛々と広げた風呂敷を畳んでいく著者の手腕が見事です。
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