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趙廷來著。伊學準監修。川村湊校閲。筒井真樹子、安岡明子、神谷丹路、川村亜子共訳。集英社刊。全10巻。

サブタイトルは「冬とともに逝った英雄」です。最後の巻なので登場人物の死体が累々というのは覚悟してたんですが、英雄というのは意外な人物でした。討伐軍の冬期攻勢を受けてパルチザンたちが激減していくなか、部下を率いて戦い、生き延びた李泰植(イ=テシク)と河大治(ハ=デジ)が党に英雄認定されるという。で、李泰植の戦死が章と巻のタイトルとなりましたが、それはほかにも亡くなった無数のパルチザンたちの姿でもあるのでしょう。

比重がすっかりパルチザン8:それ以外の人びと2になりまして、意外なことに沈宰模(シム=ジェモ)の最期は描かれませんでした。最前線に送られたので、きっと順徳(スントク)のことを思いながら戦死したんだろうと思います。順徳もアメリカ兵に乱暴された後、行方不明になっちゃったそうなんで、せめて沈宰模と結ばれていれば、まだ良かったろうにと思います。( ´Д⊂ヽ

党の幹部に出世した鄭河燮(チョン=ハソプ)は結局、素花(ソファ)ちゃんのことを思い出すこともなく北へ行きます。そして5年の実刑を喰らった素花ちゃんとドルモル宅の出番はなしです。まぁ、刑務所にいるからどうしようもないっちゃどうしようもないんですが。
そして鄭河燮から言われて金範佑(キム=ボム)は反共捕虜となって故郷に帰り、地下活動をすることが示唆されます。いちばん辛い立場だなぁ… お兄さんの金範俊(キム=ボムジュン)とはついに会えずじまいで、兄が帰郷したことを知って驚くしかできませんでした。でもこれから辛いんだから頑張ってくれ…
そのお兄さんはパルチザンの李海龍(イ=ヘリョン)と行動をともにしていましたが、独立運動時代からの凍傷が悪化して歩けなくなり、最期は李海龍におぶわれて戦死… ( ´Д⊂ヽ

あと、1巻からずーっと安昌民(アン=チャンミン)を慕い続けてきた李知淑(イ=ジスク)先生は党の方針が変わって結婚することができ、偽装転向で里に戻ります。しかし、結局、偽装がばれちゃって逮捕され、一時は死刑を求刑されますが、安昌民のお母さんの奔走で無期懲役に減刑されたそうです。安昌民はそれなりに土地を持っていたのですが、農地改革の時に小作人たちに土地を分けるようにお母さんに言い残して入山し、パルチザンになったので、賄賂を贈るために土地を提供してくれた小作人の人たちのおかげでもあります。情けは人のためならず… 山で廉相鎮(ヨム=サンジン)から顛末を聞いた河大治に、廉相鎮が安昌民と李知淑のこれからの戦いを説く姿が印象的でした。
河大治の子どもたちはドルモル宅のお母さんに引き取られますが、快活な少年だった長男の吉男(キルナム)がアカの子どもだとさんざんいじめられてすっかりいじけちゃったという描写がまた辛い… ( ´Д⊂ヽ 弟思いのいい子だったのに…
そこに警察を辞職させられた李根述(イ=グンスル)が徐民永(ソ=ミニョン)の夜学に教師として勤めることになり、吉男たちを訪ねて夜学に誘います。おっちゃんええ人やぁ…

そしてこの多彩な登場人物たちのなかでも主人公格だったと思われる廉相鎮も戦死します。
休戦協定を受けて、党はパルチザンたちに歴史闘争に転換するよう命じるのです。それは歴史に残るために戦って死んでいくというもので、もはや隠れる意味もないのかと… ( ´Д⊂ヽ まぁ、軍による二度の大攻勢により、パルチザンたちは激減(1回目で半減、2回目でも半減したので1/4以下になってる)してしまった上、さらに警察による攻勢もあり、敵の武器は良くなり、こちらは武器の供給もなく、食糧も補給されずと本当に限界まで追い詰められてしまったせいもあるのですが、死んじゃうしかないのかと… それが人民の心に残り、またいつか立ち上がらせる力を生み出すのだと… 言われても、わしは納得できなさそうです。
でもパルチザンたちは党のために死んでいく。その壮絶な最期に目が離せませんでした。
廉相鎮は部下とともに手榴弾で自決するのですが、その首をとられ、筏橋(ボルギョ)にさらされます。これをお母さんの虎山(ホサン)宅と女房の竹山(チュクサン)宅が取り戻そうとし、警察が止めようとするのをあれだけ兄のことを憎んでいた廉相九(ヨム=サング)が加勢するという展開は予想してませんでした。ただ、廉相九にしてみれば、今の大韓民国に乗って成功していく自分とパルチザンとして死んだ兄とを比較した時に明らかに自分=勝ち組、兄=負け組と思ってそうなんで、その余裕もあって「死んだアカはアカじゃねぇ」という台詞も出てきたのかと思います。あるいはさんざんパルチザンとして軍や警察を翻弄した兄を見直したのか…
そして、パルチザンたちが何かするたびに警察に捕まり、過酷な取り調べを受け、そのたびに激しく夫を憎むようなことを言い、警察官に噛みつき、自分に鞭打つようなキャラクターだった竹山宅が廉相鎮の首を抱えて号泣するというシーンは愛憎とか、そういうものを越えた夫婦の繋がりとか、そんな陳腐な表現しか出てきませんでしたが、そんなことを思わせました。( ´Д⊂ヽ

孫承旻(ソン=スンホ)も偽装転向で山を下りる途中で殺されてしまいました。最後まで廉相鎮と再会しなかったなぁ。まぁ、孫承旻がさんざん思ってるように再会させたら陳腐なシーンになっちゃうし。

そして、最後まで生き延びた河大治が廉相鎮の墓参りをして、さらなる闘争を誓って去っていくシーンで締め。河大治と一緒に行動していた外西(ウェソ)宅も死んだシーンは描かれていないので一緒に行動しているのでしょう。すっかりたくましいパルチザンになってよぅ… 河大治が最後まで生き延びたのはさんざん書いてますが「七人の侍」で農民たちに「走って走って走りまくれ」と言って自分も生き延びた七郎次を思い出しました。河大治も、「通常の人間の3倍速い」と言われたパルチザンたちのなかでも特に速いと言われてたんで頑張ったんだなと。

時代的には全然別なんですが、南北の兵士たちの交流と悲劇を描いた「JSA」のB.G.Mが頭の中で流れてました。特に「忘れ去られた人々」とか。そして「忘れ去られた人々」がロシア民謡(原題「Luchinushka」)だといまさら知って驚くわし。ガ━━━(゚Д゚;)━( ゚Д)━(  ゚)━(   )━(゚;  )━(Д゚; )━(゚Д゚;)━━━ン!!!!!
YouTubeで聞けるんで貼っときますね。↓



というわけで「太白山脈」も終わりです。

この話で日本人であるわしが泣いちゃうのは感傷に過ぎないのだと思うのですが、やっぱり泣いちゃいました。特に釜の蓋と廉相鎮の首を取り返すところとか。
読み始めた時はここまで壮大な物語だとは思ってませんでした。単に映画の補完をするつもりだったのが、あの映画で描かれたのはこの小説の半分に過ぎないとわかって、やっぱり最後まで描かないとこの物語のテーマは伝わらないだろうなぁと思います。むしろ大河ドラマ(NHKじゃないよ!)とかでやってほしい。
風景の描写とかも素晴らしく、人物の造型も様々でまさしく大河小説の名にふさわしい壮大なエンタテイメントであり、日本とアメリカの罪業を深く抉る小説でもあり、久しぶりに読んだ傑作でありました。

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