監督・脚本:ティム・ブレイク=ネルソン
原作:ミクロシュ=ニスリ
出演:ホフマン(デヴィッド=アークエット)、ニスリ(アラン=コーデュナー)、ムスフェルド軍曹(ハーヴェイ=カイテル)、ダイナ(ミラ=ソルヴィノ)、アブラモヴィッチ(スティーヴ=ブシェミ)、ローザ(ナターシャ=リオン)、サイモン(ダニエル=ベンザリ)、ほか
見たところ:うち
2002年、アメリカ
わし的ホロコースト物の二大傑作(もう1本は「
聖なる嘘つき」当然)です。わしは、8月は原爆の日や日航忌や何より敗戦記念日があるので鎮魂の月という印象が強く、あの戦争にまつわるような映画が観たくなるので借りました。ついでにジェット=リーの新作も1枚。
相変わらず救いのない展開でしたが、わしが絶望したのは彼ら・彼女らが押しつけられている運命に対してではなく、日本人として、わしは加害する側に立っているんだという事実に対してでした。あの時代、ナチス・ドイツと同盟国だった日本人が、ああして迫害され、戦おうとしていたユダヤの人たちが「可愛そうね」と観ているだけではもういけないのだと思いました。
確かに日本には2発の原爆が落とされ、その前後にも空襲で大勢の人が亡くなるという被害者としての一面もありますが、もうそれだけでは済まない、自らの加害の歴史に向き合い、刻一刻と時間を失いつつある被害者の方々に謝罪しなければならない。その上で日本中の全ての叡智を結集してフクイチの吐き出す放射能を封じ込める方法を見つけなくちゃ、この先、日本が世界の一員として歩む未来は見えないんじゃないかと思いました。
やれロボットだ、やれ人工衛星だと浮かれて、テレビでは連日のように「日本の良さ」だのを伝えるような自慰番組を流している場合ではないのだと思うのです。
眼球を失った落ちくぼんだ眼窩で死者が訊ねます。「おまえたちは何をしたのか、何をするのか、何をしようとしているのか」と。
それはホロコーストで命を奪われたユダヤ人やロマたちであり、アジアで殺された民衆であり、原爆や焼夷弾を落とされ、火炎放射器で焼かれた日本人自身の姿でもあるのだと思います。
たんぽこ通信 映画五十音リスト
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