監督・脚本・音楽:エミリオ=アラゴン
出演:ホルヘ(イマノル=アリアス)、エンリケ(ルイス=オマール)、ミゲル(ロジェール=プリンセプ)、ロシオ(カルメン=マチ)、ほか
2010年 スペイン
見たところ:横浜シネマ・ジャック&ベティ
「蝶の舌」より少し後の時代のスペインの話です。
公開中の映画につき、以下は続きにしまっておきます。
内戦中のスペイン。喜劇役者のホルヘは、ある日、反乱軍の爆撃により最愛の妻子を失い、マドリードから姿を消す。やがて内戦はフランコ率いる反乱軍の勝利に終わり、監視の厳しいファシズムの時代がやってきた。一年後、ホルヘがマドリードに戻ってきたが、反政府運動の疑いをかけられ、軍の監視下に置かれるが、ホルヘは劇団に戻り、相棒のエンリケ、エンリケが保護者になった孤児のミゲルとともに暮らし始める。しかし殺された息子と同じくらいの年頃のミゲルに、ホルヘはきつく当たってしまっていたが、芸を覚えようとするミゲルに、いつか「2人だけのネタを作ろう」と言うのだった。そんなある日、ホルヘたちの劇団がフランコを慰労するために芸を披露することになるが、ホルヘはエンリケやミゲルと生きていくために、アルゼンチンに亡命することにするのだった。
独裁政権下のスペインで一生懸命生きている市井の人びとの物語です。
個人的にホルヘの相棒のエンリケさんは、ホルヘが好き(Love)なんじゃないかな〜と思って見てました。というか、別におかまってわけではないんですが、ご飯作ったりしているところを見ていたら、妙に女性的というか、ごっついおじさんなんだけど、すごい気配りの人だと思った。そうしたら、終盤、軍に連行されちゃって(ホルヘが「フランコとは暮らせない」なんて歌を唄ったもんだから)、顔を傷つけられて帰ってくるんですよ。そこでホルヘが、舞台化粧をしてやって、傷を隠すシーン、けっこう長くて濃密な描き方で、なんか相棒というよりカップルに見えました。
ホルヘさんは基本、しかめっつらが多いんですが、劇団の歌手ロシオに見せる友情や、若い芸人のメルセデスを気遣うところなんか、けっこう面倒見のいい人で、ミゲルが慕う理由もわかろうってもんです。
しかも途中でミゲルの母親がニュース映画に登場したってんで、わざわざ探しに行ってしまう人の良さ。でも母親はミゲルのことを覚えていなくて、それでもホルヘさんは「ミゲルはいい芸人になれる」と言って、ミゲルの父親になることを決意したんだろうなって辺りから涙ぼろぼろ、鼻はぐしゅぐしゅ。
わしもミゲルよりもホルヘさんとかエンリケさんとか、歌手のロシオさんに近い年齢なもんですから、なんていうの、きっとホルヘさんは妻子を殺した現政府に恨みを持っていて、行方知れずの一年間に反政府活動なんかしていたんじゃないかと思うのよ。マドリードに戻ってきたのも、きっと腹に一物あったんじゃないかと思うのよ。でも、そんなものよりも相棒のエンリケさんや、父と慕うミゲルくんや、監視役の中尉に目をつけられちゃった若手のメルセデスと一緒に、新しい人生を生き直そうとした。だから、フランコを殺せるかもしれない絶好のチャンスにも、4人で逃げ出して、新天地で生きていこうとしていた。それなのに、ああ、それなのに、それなのに…
。・゚・(ノД`)・゚・。
途中で引退しちゃったけど、歌手のロシオさんも好きな人でした。演ずるカルメン=マチさんは歌って踊れる女優さんだそうで、ロシオもプロフェッショナルぶりが良かったですよ。歌もいいし。でも、巡業に行った村で会った村長さんとうまくいってしまい、そろそろ引き時ってんであっさり辞めてしまいました。
ラスト、フランコの死により、解放されたスペインに戻ってきたミゲルがえらいおじいちゃんになっていて、「歳月ってむごいわ」と思っていたら、監督のお父さんなんだそうですよ! ガ━━(゚Д゚;)━━━ン!!!!!
エンディング、ホルヘ、ミゲル、エンリケの3人で馬車に乗って笑い転げている旅のシーンは、彼らがずっと劇団にいたことを考えると、実際にはあり得なかった幻なんじゃないかな〜と思いました。
でも本編ではほとんど笑わなかったホルヘが破顔一笑してるところを見ると、人生、笑ったもん勝ちって感じで、そこも良かったところでありました。
たんぽこ通信 映画五十音リスト
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