監督・脚本:ミヒャエル=ハネケ
出演:教師(クリスティアン=フリーデル)、エヴァ(レオニー=ベネシュ)、男爵(ウルトリッヒ=トゥクール)、ドクター(ライナー=ボック)、牧師(ブルクハルト=クラウスナー)、男爵夫人(ウルシナ=ラルディ)、クララ(マリア=ヴィクトリア・ドラグス)、マルティン(レオナルト=プロクサウフ)、ほか
見たところ:横浜シネマ・ジャック&ベティ
2009年、ドイツ・オーストリア・フランス・イタリア合作
たきがははジャック&ベティの会員なので毎月、映画の案内が送られてくるのだが、昨年は「
キャタピラー」以降、食指が働かなくなったのと、薄給で映画なんか見に行った日には赤字間違いなしだったので今年、初です。
ドイツの片田舎の村。ドクターの落馬事故を初めに、小作人のおかみの転落死、男爵家の跡取りの失踪、男爵家の納屋の火事など、次々に事件が起こり、村の中で人々は疑心暗鬼に駆られていく。おりしも第一次世界大戦の前夜、人びとがやがてナチスに心頭していったように見えない悪が村を蝕んでいく…。
ええと、わし、こういう文芸作品は苦手なので、わかったような粗筋を書いておりますが、実は全然わかってませんでした。何と言うか、田舎の村で犯人もわからない事件が相次いで、よりによって支配者の男爵が「犯人は我々の中にいる」なんて言ったもので村人が疑心暗鬼になってったり、子どもたちが大人たちが信じているような純真無垢ではなく、何か秘密を抱えていたりと、一見、牧歌的な風景なのだけど、その底に流れる悪意というのまではわかりましたが、別に見ていて不安にもなりませんでしたし、何か凄い映画を見たなぁ!という感想も抱きませんでした。ぶっちゃけ、つまらない映画でした。
ひとつには、日頃、わしが批判的なナレーターというか、狂言回しの役を学校の先生(キャストのトップに持ってきた)がやってるのですが、この人、この村の出身じゃないもので、一応、教育者として子どもたちにかかわるわけですけど、どうも第三者的なお気楽極楽な立場にしか見えなくて、なにしろ、村では上記で言ってるようにいろいろな事件(大してでかい事件でもないんだけど、こういう田舎の村では十分な大事件)が起きているにもかかわらず、彼の関心といったら、男爵家の乳母を首になったエヴァ(しかも12歳ぐらい年下)にしか興味がないみたいで、どうも軽く見え、でもそんな奴のナレーターがしばしば入るものでどうもしらけ、というのが最大の原因ではないかと思います。
あと、冒頭で犯人もわからないまま事故らされたドクターは、息子の出産と同時に妻を亡くしており、近所に住む助産婦に手伝いをしてもらっているのですが、彼女が実は愛人で、でも歳を取ったものだから愛想を尽かして、あろうことか自分の娘と乳繰り合っているという人でなしという展開もなんだかな〜で、わしは終盤になると眠気との戦いで、とてもチラシにあったような「とっておきのワインで酩酊した気分」にもならなければ「邪悪な謎にゾクゾク」もしなかったのでした。
確かに時代的には第一次世界大戦の前夜で、しかもその後にはナチスへの狂気が控えているわけなんですが、別にナチス関連の有名な村でもないし、まぁ、そこまでやると阿漕すぎるような気もしますが、その悪意というのは子どもたちを自分の意のままに縛りつけようとする牧師に対する子どもたちの敵意じゃなかろうかとか思ったり(現に、長女のクララは牧師の可愛がっている鳥を殺してるように見えるので)、古い因習に縛られた村の悪意というようにも見え、どうにも文芸的でおもしろくなかったのでした。
そういや、「毎日かあさん」の中で小泉今日子さんがいちばんいまいち(四人家族の中で)と思いましたが、それは彼女がナレーターもしちゃってるので、そのナレーションでいまいちその心情に寄り添えなかったことが敗因ではないかと思ったり。むしろ、演技でしか語れない永瀬さんのがずっと雄弁だと思ったよ。
なにしろナレーションはいくない。
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