監督:林雅行
主題歌:寿「ひとつのおもい」
見たところ:横浜シネマジャック
2010年、日本
ちくしょ〜! こんな映画が1週間で公開終わりだなんてどうかしてるよ! 来週は川崎で公開だそうですが、もっと大勢の人が見なくちゃいけない映画だよ!
公開中の映画ですので、続きにしまっておきます。
空襲で障害を負った戦災傷害者たち。彼らに国からの補償はなく、そのための戦いは40年以上も続いている。その戦いを担うのは名古屋空襲で左目を失った杉山千佐子さん、94歳。おしゃればベレー帽にレースのドレス、杖をつき、カートを引き、左目には大きな眼帯をした全国戦災傷害者連絡会の会長を50代の頃からずっと務めている。杉山さんは今日も全国の戦災傷害者を訪ねて歩く。生きているうちに国による民間人の空襲犠牲者の救済を求めて。
そう言えば、空襲のことは知っておりましたが、そこに杉山さんたちのような傷を負い、傷害を負うことになった人たちがいるとは思いが及んでおりませんでした。畜生、そんなこと、ちょっと想像力を働かせればわかりそうなものじゃないか。でも、もう忘れることはないでしょう。二度と忘れることはしないでしょう。
杉山さんの力強さに引っ張られるようですが、またその一方で同じ戦災傷害者の方の娘さんの反対する言葉もきちんと伝えます。「いくら期待しても無駄なんだ」と。「子どもたちはみんな迷惑しているのだ」と。どれだけの絶望をこの人は見てきたのだろうと思いました。そのお母さんが困ったような顔で笑っている横で、撮影を続けるスタッフを罵る娘さん。お母さんや杉山さんが諦めないでいるのに、娘さんの方が先に諦めてしまった。50年というのはそれぐらい長く、決して杉山さんたちの願いをかなえようとしない国の築き上げた壁はそれほど高く、周囲の偏見と無理解の眼差しもそれだけ強かったのだろうと思う。でも、笑っているお母さんも、彼女に代わって娘を叱る杉山さんも諦めない。そんなもので諦めるほど、この人たちは弱くないのだ。
驚いたのはそういう状況がいわゆる先進国では日本だけだってことだ。アメリカでもドイツでも、戦争で傷ついた軍人・民間人の区別なく補償がされている。ああ、日本が先進国だなんて誰が言ったのだろう。自分たちが起こした戦争で傷ついた人びとに救済してあげることもできない国を誰が先進国だなんて思うだろう。でも思えば、日本という国は戦後65年間、ずっとそうだった。沖縄を、水俣を、辺境の人びとを切り捨てたように、戦災傷害者という弱者も切り捨ててきた。それが自民党の行ってきたアメリカに追従する政治だったのだ。だから、俺は自民党が政権を独占してきた状況に二度と戻りたくないと思うのだ。でも、政権交代がなっても、杉山さんたちの願いはまだかなえられない。
全然チェックしてなかったので、上映後の監督の挨拶と、主題歌を歌った寿のミニライブは嬉しいおまけ。観客が6人ぐらいしかいないのが申し訳ないくらい。思わず寿のCD買いました。生まれて初めてサインしてもらいました! ギターの方が沖縄出身だって聞いて、どうして沖縄No BaseのTシャツを着ていかなかったのか〜!と思ったよ。シャツにサインしてもらったのに〜!
主題歌の「ひとつのおもい」は、元々、辺野古への基地移設について割れる地元の人びとを歌ったんだそうだ。基地を受け入れようとする人も、基地を拒絶する人も、同じように沖縄の未来を思っていることに違いはないのに、権力者というのはそうやって人びとを分断する。本当ならば同じ思いの人たちを引き裂き(実際に離婚したり、家族がばらばらになった人たちもいたそうで)、そういう手段はずっと執ってきたのだ。大昔から、権力者は我々庶民を分断し、支配してきた。もうそんなことに誤魔化されるのはやめようと思う。誰が本当の敵か、見極めたいと思う。
沖縄のこと、パレスチナのこと、ビルマのこと、怒るための理由は世界にたくさん転がっている。忘れない。そして怒りの矛先をぶつける相手を間違えてはいけない。
7月30日まで横浜シネマジャックで上映中です。7月31日からは同じ林監督と杉山さんのドキュメンタリー映画が公開されますので、こちらも是非、見たいと思います!
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