小川一水著。角川春樹事務所刊。
副題が「レーズスフェント興亡記」。中世ドイツ史のような筋立てだけど、そこはSF作家・小川一水さん、前史の時点から謎の女レーズの存在が古代ヨーロッパのようでいて、そうではない舞台になっていて、最後までこのレーズが鍵を握る。ただ、それ以外の点では中世ドイツの町作りの物語で、ルドガー、リュシアンの兄弟を初めとする登場人物たちが多彩で楽しいのだ。
ガリア遠征に赴いたカエサルが出会ったのはレーズと名乗る不思議な女。カエサルの作った町はレーズを魅了し、やがて町は滅んだがレーズは町作りに惹かれ続けた。それから1000年以上が経ったレーズの泉の側にあるモール庄に騎士ルドガーとその弟リュシアンが庄司として赴任してきた。レーズと会ったルドガーは、中州に町を作り、そこをレーズスフェントと呼ぶようになった…。
町が作られていく様子がおもしろいです。それに主人公のルドガーが騎士ではあるんだけど、生い立ちの複雑さとか、主君の娘エルメントルーデ姫との相思相愛ぶり、恩師ハインシウスに寄せる尊敬とか、騎士と言うには一筋縄ではいかないところがありまして、この近代的なキャラがいいのさ。表紙の騎士はルドガーだろうな、やっぱり。
小川さんもまだまだ読むぞ〜
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