MGMの集大成映画、第2弾です。今度は趣向を変えて、フレッド=アステアとジーン=ケリーという、MGMが誇る二大スターが案内役。で、ミュージカルが主体ではありますが、「風と共に去りぬ」のラストシーンまであったりして、まさにタイトルにふさわしく、アメリカ風のエンタテイメントをこれでもかと詰め込んだ一作。
思えば、この時代のアメリカは自分たちの繁栄に酔っていたのではありますまいか。アメリカ一番、アメリカ最高という自負が、この映画からは見て取れます。
その上で、この時代の映画とは、まさにスターのものだったと思うのです。最近のように、スターと呼ばれる人たちが小粒なのではない。芸において、まさに唯一無二のものを持っていた人びと、フレッド=アステアのタップを見よ、ジーン=ケリーのダンスを見よ、まさにほかには変えられぬ芸を持っていたスターたちがいたのが、この時代だったと思うのです。等身大の隣のお兄さんなんてまがい物ではない、ほかに置き換えられない、唯一無二のスター、そんな時代だったから、ミュージカル映画は輝いていたのではなかったか、作られたのではなかったか、喜ばれたのではなかったか。
けれど、皮肉なことに1970年代からハリウッド映画も斜陽の時代に入ったとわしは思います。明らかにスターがいなくなり、大作と言って金はかけているけれど、本当の映画が少なくなったと思います。それは、アメリカが初めて敗北を喫したベトナム戦闘と無縁ではないのかもしれないし、世界がだんだん狭くなって、第二次世界大戦で傷つけられたヨーロッパや、新興国のアジアから新しい映画が現れて、ハリウッド映画が唯一無二の選択肢ではなくなっていったこともあるんだろうかなと思うわけです。
だからか知りませんが、1970年代以降のアカデミー賞は急に魅力を失っていきます。アカデミー賞を取ったから素晴らしい映画ではなくなっていったと思います。アカデミー賞がアメリカ国内の賞にすぎないという認識をするのがこの時代以降です。あくまでわし的な感想ですが。
そういう意味では、この映画は、旧き良き時代のハリウッドの灯火のような、そんな感じもするのでした。
たんぽこ通信 映画五十音リスト
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