宮本常一、山本周五郎、揖西光速、山代巴監修。平凡社ライブラリー刊。全5巻。
山本周五郎さんの名前があったので速攻で借りてしまいましたが、ほんとに周五郎さんだったのか不明… 周五郎違いの別人か?
サブタイトルは「貧しき人々のむれ」で、タイトルどおり、「残酷」な物語というか民俗学的なものを集めた本なんですが、第1章の「追いつめられた人々」のうち、「山民相奪う」あたりから落武者の話が中心になってきまして、わしが期待したような庶民の話ではなくなってしまったのが残念です。うーん、どんなに貧乏してても武士は武士だから、農民とかに比べたらまだましだと思うんじゃよね… 結局、武士には誰かから奪うための武力があったんだから。まぁ、江戸時代とかの浪人とかだと固定収入が絶たれているんで窮乏もするんでしょうけど、どうなんだろう、木の根まで食わなければ生き延びられなかった農民や、さらに下層の穢多・非人とかに比べたらましだったんじゃないでしょうかね…
と思ったので、そこら辺はあんまりおもしろくなかったです。
しかし第2章「病める大地」になると飢餓と病気の話になりまして、ここら辺は「アシュラ」なんかの記憶も蘇って、凄まじかったんですけど、まぁ、自分たちは楽してる武士というのが権力者だった江戸時代というのは庶民的には最悪の時代だったんだろうなぁ…と思いました。いや、少しでも幕府がましなら、三大飢饉に無策とかあり得ないでしょとか思った。
第3章「弱き者の世界」がいちばんおもしろかったんですけど、老人、子ども、女性というのはすでにわかりきっているところでもあるんで、新鮮な話だったのはやっぱり第1章の「海辺の窮民」でした。
むしろ、水俣の水俣病以前の豊穣さと貧しさを知っているだけに、あのような浜に行けば一家が食えるだけの魚貝は手に入ったという世界は例外だったのかと思いました。まぁ、日本海側とか多かったんで、それだけ貧しかったんだろうとは思うんですが、金沢とか新潟なんかはけっこう豊穣なイメージもあるもんで、まぁ、それは一部の例外に過ぎなかったのかとか。不知火海も穏やかな内海なんで、外海はまた別天地なのかもしれませんね。
それだけに、あれだけ豊かな不知火海沿岸地域を破壊したチッソと日本の罪深さは救いようがないなぁという思いを新たにしました。
あと4冊あるんで、珍しく日本に目が向きましたが、読んでみるつもりです。
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