五味川純平著。光文社文庫刊。全9巻。
2・26事件が中心の第4巻です。
伍代家の人びともそうですが、軍人である柘植や、伍代家の女中頭である滝の知り合いの軍人も2・26事件に直接関わることはないので、実在の人物の証言や回想が中心なのですが、例によっておもしろくありません。小説に事実を混ぜるのは別に歴史小説なので有りなんですけど、小説なんですからおもしろくないといけないと思うんですが、全然おもしろくないです。
基本的に、この作家さんは虚実入り交じりの小説は書けないのではないかと思います。わしは2・26事件の評論を読みたいわけではないので作者の考えを混ぜられてもあんまりおもしろくありません。ドキュメンタリーを読んだ方がよほど早いと思います。
確かに戦争に突き進んでいく当時の日本を描くには2・26事件は決して避けては通れない一大事ではあるのですが、もうちょっと工夫してもらいたいです。そこいくと「人間の條件」はおもしろかったです。梶か美千子の視点なんで、実際の事件はほとんど出てこなかったですからね。
これが2・26事件を主題にした小説ならば話は別ですが、「戦争と人間」の主役は伍代家とそこに関わる人なんで、そこら辺、ちょっと違うんじゃねーのと文句を言いたいです。
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