山本周五郎著。新潮文庫刊。
周五郎さんには大変珍しい伝奇時代劇です。
江戸の旗本、安倍半之助は甲府勤番中に失踪した叔父の遺品を調べるうちに、叔父を狂気へと導いた武田家の莫大な遺産、130年間、武田家再興を悲願するみどう一族、権勢を振るう柳沢吉保の一派らの陰謀に巻き込まれていく…。
タイトルのとおり、ヒロイン2人が重要な位置を占めておりますが、「
風流太平記」のように主人公が翻弄されたりしません。姉の登世は伝奇物にふさわしいリーダーシップを発揮しますが、悲願を達成できずに武田の遺産や崇拝者とともに滅びます。妹の花世は周五郎さんが描く無邪気なヒロインらしく、物語の終わった後で半之助と結ばれそうです。
舞台の甲斐はもともと周五郎さんの生まれ故郷でした。韮崎市にはこの話を記念した碑も建てられているそうです。
肩の凝らないエンタテイメントですが、個人的には甲州に入ってからがあっさりしてるのでもっと盛り上げてほしかったかも。
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