貴田庄著。朝日文庫刊。
原節子さんがお亡くなりになった時に朝日新聞の書評欄で紹介していた文庫だったのですが、手前味噌かい。
原さんの出生から引退までを、全部で50章の細かいエピソードに分けて綴るエッセイです。著者は小津監督のファンだそうで、小津監督の映画によく出ていた俳優さんで本を書こうと思ったのですが、小津監督の映画といったら、やっぱり笠智衆さんと原節子さんがトップクラスなんで、その二人のどちらかに絞ろうと考え直し、笠さんは他に著作があるけど、原さんは単独の著作はないので原さんにしたそうです。
細かいエピソードは多いのですが、わしの好きな黒澤監督の映画関係の話は2章ぐらいしかないのでちょっと期待外れでした。やっぱり原さんというと世間的には小津監督になっちゃいますからね。
わしとしては「白痴」の原さんが三船や森雅之さん、久我美子さんといった方々とがっぷり四に組み、ロシアの原作を敗戦直後の北海道に翻案した脚本とか、悲劇のヒロイン、那須妙子についてどんなことを考え、どんな風に演技したか、特に四人が一同に介するただ一度のシーン、クライマックスや、その最後とか、聞いてみたかったなぁと思いました。
個人的には原さんがビール大好きで、煙草も後でやめたそうですが、けっこう吸ったとか、そういう私的な話よりも映画について聞きたかったです。
まぁ、水着とお色気シーンと舞台挨拶は絶対に断ったという原さんのことなので、那須妙子みたいな囲われ者だった女性というのは異色なのかなぁと思ったりもするんですが。ほかの作品見てると圧倒的にお嬢様とか、良妻賢母とか、未亡人とかばっかりだし。
原さんのお若いころからの写真が満載なのが唯一の収穫ですわい。
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