船戸与一著。徳間書店刊。
残り2冊となった船戸与一さんの著作の1です。これ読んだらあとは「蝕みの果実」だけだ…・゚・(つД`)・゚・
中国地方の山奥、赤猿温泉郷にやってきた高倉圭介は岸谷武彦の経営する興信所の調査員。バブルの高揚とも景気回復とも縁がないひなびた温泉での仕事は、最近温泉町に帰ってきた若宮純次の監視だ。彼はこの小さな温泉街で町中の男と関係を持ったという若宮和江の息子であり、自殺した鈴子の弟でもある。しかも和江も娘と同じ場所で自殺しており、純次が帰ってきたのは姉の鈴子の忘れ形見、小学生の少女、沙耶の面倒を診るという名目だったが、町の男たちは純次が母と姉の復讐のために戻って来たのだと信じて疑わない。彼には上京した先で就いた仕事場で雇い主を刺し殺した前科があったからだ。圭介は開店休業状態の赤猿の湯という宿に泊まり、純次への監視を開始するが、やがてこの地方の隠された歴史に興味を抱くようになっていく…。
つうわけで、読んでいるうちに横溝正史が頭をちらつきました。過去の因縁とか事件とか得意でしょ? これもそういう話だったんで、船戸さんにはちょっと珍しいかなぁと思いました。
展開はエロ度が多く、読む人を選ぶと思います。船戸さんが描くエロシーンは、わりと濃厚というかこってりな上に、今回は人間関係もどろどろしているので、かなりくどかったです。あと未成年にああいうことをやらせるのは、読んでてしんどい。
謎解きが狂言回しの高倉がわかった時点で書いてくれないので、まぁ、登場人物同士の対話に盛り込みたかったんでしょうが、ちょっと間延び。
最後は高倉まで死んじゃってEnd。
しかし考えてみたら、船戸さんの小説は後味すっきりというのがむしろ例外で「山猫の夏」「蟹喰い猿フーガ」「緑の底の底」「新宿・夏の死」収録の「夏の渦」「夏の雷鳴」「夏の夜雨」「夜来香海峡」ぐらいでした。
ただ、わしは「砂のクロニクル」で船戸さんを知り、「猛き箱舟」と「山猫の夏」でべた惚れしちゃったので、そういうのも読みたかったなぁと思うのですが、きっと船戸さんの目に映っていた世界は、そんな甘さを許さないものだったのかもしれないなぁと思います。
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