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されど平穏な日々

日々のつぶやきと読んだ本と見た映像について気まぐれに語るブログ。Web拍手のメッセージへのレスもここ。「Gガンダム」と「ジャイアントロボ」への熱い語りはオタク度Maxにつき、取り扱い注意! 諸事情により、コメントは管理人が操作しないと反映されません。時々、サイトの更新情報など。

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1987、ある闘いの真実

監督:チャン=ジュナン
出演:パク所長(キム=ユンソク)、チェ検事(ハ=ジョンウ)、看守ハン=ビョンヨン(ユ=ヘジン)、女子大生ヨニ(キム=テリ)、キム=ジョンナム(ソル=ギョング)、チョ刑事(パク=ヒスン)、記者ユン=サンサム(イ=ヒジュン)、ヨンセ大学生イ=ハニョル(カン=ドンウォン)、ソウル大学生パク=ジョンチョル(ヨ=ジング)、ほか
韓国、2017年

光州(クァンジュ)事件を描いた「タクシー運転手 約束は海を越えて」より過ぎること7年、ある大学生の拷問死をきっかけに大きく動いた韓国の民主化闘争の流れを描いた傑作映画です。主役を一人に絞ることなく、ポスターにも示されたとおり、6人のまったく立場の違う主要人物を追うことで繋ぎ、ラストまで引っ張っていく力量はさすがの韓国映画、無駄もなく、隙もありません。

反共活動の中心地、南営洞で一人の大学生が拷問死させられた。責任者のパク所長はその事実を伏せようとするが、死んだその日のうちに解剖もさせずに火葬にさせようとしたことで、常々パク所長以下、南営洞のやり方に不満を抱いていたチェ検事は、大学生の遺体を強引に解剖させ、その事実を新聞記者のユン=サンサムにリークする。事実をすっぱ抜かれたことで言い逃れのできなくなったことを知ったパク所長は2人の部下を実行犯に仕立てることで事件を収束させようとするが、軍事政権に抑圧されていた民衆の不満は容易に収まらず、学生たちのデモも激しさを増していくが…。

ソル=ギョングのネームバリューが大きいですし、さすがの民主化運動のリーダーとしてパク所長が長年追いかけている大物ですが、比重はそれほど大きくありません。要所を締める重鎮って感じの使い方が贅沢です。

看守のビョンヨンは「タクシー運転手」でもお馴染みのユ=ヘジンさん。最初は夫を失った姉とその娘と同居する、ちょっと頼りない叔父さんに見せつつ、実は民主化運動のリーダーと刑務所に収監された新聞記者を繋ぐ鳩役として、その信念は作中の誰よりも強い役どころが美味しいです。しかし、再三の拷問にも耐えていたのに、パク所長に身の上話をされ、姉と姪を殺すと脅されて、とうとうキム=ジョンナムの居場所をばらしてしまったのは非情に徹しきれなかった人情派が逆に良かったですね。そのくせ、捕まった時にとっさに姪の持ち物に通信文を隠す辺りの機転の効き方なんかがたまりません。パク所長らが捕まえられ、釈放されてすぐに姉に電話したシーン、声だけの演技なんですけど、いかにもな拷問明けって感じの痛々しさが伝わって、こっちもお姉さんと一緒に涙です。

チェ検事は最初に力強く映画を引っ張っていく正義感溢れる人物でしたが、辞職させられて、ちゃっかりユン記者に拷問の証拠とかを残していく辺りなんかがいい感じでした。どうやら妻のお父さんのおかげで、多少やんちゃでも目をつむってもらえていたのを、「勝ち目はゼロ」と言いながら、酒を煽りつつ大学生の拷問死事件を闇に葬らせない動きはハ=ジョンウさんのクールな眼差しもあって、反共という伝家の宝刀に楯突く駄犬(と言われてた)ぶりがさらに格好良かったです。その後、弁護士に転身したのもいい選択。「ベルリンファイル」に出ていたというので調べてみたら… ジョンソンかよ!!! ガ━━━(゚Д゚;)━( ゚Д)━(  ゚)━(   )━(゚;  )━(Д゚; )━(゚Д゚;)━━━ン!!!!! 道理で癖のある格好良さ…

ヨニちゃんはビョンヨンの姪で、2人の話から察するに労働組合の運動を引っ張っていながら、仲間に見捨てられ、失意のために酒に溺れて交通事故死した父のことがあり、民主化運動を冷めた目で見ちゃってたんだけど、叔父さんの活動とか、デモに巻き込まれて同じ大学の先輩イ=ハニョルくんに二度も助けられた縁もあって、最後の方でそのハニョルが瀕死の重傷だっていうんで泣きながら飛び出していって、最後はデモ隊と一緒にシュプレヒコールをあげるシーンまでの熱演が等身大の学生って感じで良かったです。考えてみたら、ヨニちゃんて、わしと同年代なんだよね〜 それを意識して見ていたわけではないんですけど、ヨニちゃんのシーンがいちばん共感しました。

記者のユン=サンサム、権力の言うことなんか黙って聞いてやらねぇぞ!って侠気がジャーナリズムに溢れてて、いいですね。ジャーナリズムはこーでねーと。もうね、編集長っぽいおじさんが記者たちにそういう指令を出すシーンなんか見てて、ガッツポーズ出るよね。ていうか、日本の自称ジャーナリストたちは韓国の記者たちの爪の垢でも煎じて飲めばいいんですよ ヽ(`Д´)ノ

そして、これらの人びとに悪役として対立したパク所長、北出身だと紹介されたんで、西北(スプク。「火山島」参照)かな〜と思ってたら、そんな感じでした。家族を朝鮮人民軍に殺され、一人だけ南に逃れてきたことは上にも書いたとおり、ビョンヨンを脅す際に語られていますが、自分が地獄を見たからといって、自分の気に入らない人間をアカ(という言葉では物足りないほどの悪意を「パルゲンイ」という言葉から感じるわけです)に仕立て上げるのはしちゃいけないんだよ…

パク所長の部下でスケープゴートに仕立てられそうになるチョ刑事は途中、約束どおり執行猶予にならないので反抗しようとしますが、そこは子飼いの悲しさ、家族を人質にとられて泣く泣く受け入れます。ただ、事情はあるとはいえ悪に徹したパク所長に比べると中途半端さはいかんともしがたく、メインの6人に入れるにはちょっと物足りない感じがしました。

むしろビョンヨンの上司の刑務所長の方が、最初のうちこそ規則大事の官僚的でしたけど、パク所長の部下の暴行でビョンヨンが鳩(つまり連絡係)を務めていた記者さんに面談の記録を渡して、それを記事にさせる辺りなんかは良かったですね。ただ、あくまでも官僚的な人物だったんで最後にパク所長が刑務所にぶち込まれた時も嫌みの一つも言うでなし、黙って縄をほどくとか淡々とした感じでした。

そして最初から死者だったパク=ジョンチョルくんは終盤の拷問のシーンと、そもそもの発端になってたために遺影ではしょっちゅうお目にかかっておりまして、ソウル大学といったら韓国一の名門大学です。そこに入った息子に両親の期待はさぞ高かったろうと思われるだけにジョンチョルの遺灰を川に流し、その川が半分凍っているもので遺灰が氷の上に残ったのを見て、お父さんが泣く泣く「そんなところにいちゃ駄目だ」と言って雪の降りしきるなか、川に入って遺灰を流すシーンは涙をそそられましたし、ラスト、ついに明らかにされるジョンチョルくんへの拷問の実行犯を教会が訴えるシーンでも、その日がわざわざ5月18日(言うまでもなく光州事件の発端!)というのも胸を熱くさせてくれました。

そんなジョンチョルくんと直接の知り合いではないにしても「何かせずにいられない」と言ってヨニちゃんの心を鷲づかみにしたイ=ハニョルくんはチョ刑事に代わって6人目のメインキャラでも良かったんじゃないかと思いましたよ。デモ隊が警察の暴行でいったんは鎮まりかけたのをまた先頭に立って叫ぶ侠気、それゆえに催涙弾が頭に当たってしまい、亡くなってしまった不運さ、彼が重態だというのを知ってデモに反対していたヨニちゃんを大学まで走らせ、最後はデモ隊とともに拳を上げてシュプレヒコールを叫ばせた思い、そんないろいろなことを思って最後はヨニちゃんと一緒に泣きながら観てました。
ハニョルくんが2回目にヨニちゃんを助けた時も、そっとスニーカーを置く優しさとか、ハニョルくんはいい奴でした。それは当然、「タクシー運転手」のジェシクくんもそうだったように心優しい学生だったわけで、そんな人物は大勢いたわけで、そんな彼らが立ち上がり、戦わざるを得なかった民主化、そうして無数の血を流すことで民主化を勝ち取った韓国の人たちをわしは無条件で尊敬し、信頼するのです。それは決して日本という国が経験していないことであり、ゆえにこの国は平気で過去を忘れ、その過ちを繰り返しうるのではないかと思うのです。
そう、今日はたまたま沖縄県の知事選の投票日でしたが、その選挙権を勝ち取るための痛みさえ、わしらの先祖は経験していない(女性の参政権は敗戦後だから)と思うと、日本という国の唱える民主主義がどれだけいかがわしいか、先の敗戦の反省をろくにせず、サンフランシスコ講和条約を結ぶことで素知らぬ顔で西側に与した日本という国への疑義は日々、増すばかりなのでした。それは国ばかりでなく、従軍慰安婦や南京大虐殺、平頂山事件などは言うに及ばぬ過ちを犯して、そんな国に騙されたと平気で言えるこの国の国民への疑義でもあるのです。

9月29日から公開の予定が台風のために一日遅れたためか、今日はけっこうな入りでした。でも、それを見ている人たちのどれほどが韓国という国の痛みを思い、それに引き換え日本は…と思っていたのか… そんなことを思いながら劇場を後にしたのでした。

たんぽこ通信 映画五十音リスト



パンフレットを手に入れたので映画を見ただけではわからなかったところとかを追加しときます。何でパンフが遅れたのかというと台風24号のせいなんですけど、公開予定が決まってるんだから、もっと早く送っておけよ映画会社と思います。
あと、パンフないのかと聞いたら、「売り切れたんじゃ…」とか調べもせずにぬかした馬鹿! 教育がなってないと小一時間くらいは問い詰めたい気持ちです(公開が台風が直撃して劇場が休業した日で、わしが行ったのがその翌日なんだから、考えるまでもなく売り切れてるはずがない)。

チェ検事、再三、酒をあおってるシーンがあるんですが、あれ、アル中の描写だったらしいです。彼の台詞から自分を奮い立たせるために酒を飲んでるんだと思ってたんですが違うみたい。で、そんなアル中の検事でも使ってくれたのが舅ということでしたが、そういえば、嫁は登場しませんでしたね。

1987年、日本はバブルの入り口でした。竹下登が総理大臣になり、衣笠祥雄さんが国民栄誉賞を受賞し、「ノルウェイの森」がベストセラーになり、「サラダ記念日」が発売され、「ハチ公物語」にわしは涙していた、そんな年でした。
韓国では全斗煥政権が国民を3S(スポーツ、スクリーン、セックス)の愚民化政策を仕掛けていたともありましたが、日本もすっかり愚民化されてないですかね。3Sのようにうまい言葉は見つかりませんが、芸能人がくっついたの別れたの、そんなニュースで占められるのは日本ぐらいですよ。実際、韓国にいた時にニュースチャンネルをかけてましたが、芸能ニュースなんてかかりもしませんでしたもん。

この国の未来はどこまでも暗いなぁ、と思います。もう手遅れなんじゃないかと勝手に思っています。

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