監督:山崎祐次
出演:西岡常一(故人)、西岡太郎、速水浩、安田映胤、ほか
ナレーター:石橋蓮司
2011年、日本
薬師寺の大伽藍復興に力を注いだ宮大工、鬼と呼ばれた西岡常一さんの証言やインタビューを元に、彼が残したものを探るドキュメンタリー。
弟子の速水さんなどの証言から、「近寄りがたい人だった」というのは出てきますが、証言やインタビューを聞いている限り、鬼というより好々爺って感じで、怖いとは思いませんでした。ただ、最初は法隆寺を修復する宮大工の棟梁として働いていた西岡さんが、出征するたびに法隆寺にお参りに行き、帰ってはまた法隆寺に行くという姿や、文科省の役人や学者と対立したという話を聞いていると、仕事に対する姿勢は厳しく、プロフェッショナルで、やはり「鬼」と呼ばれるような人だったのだろうと思わせる部分はあります。でも、当人はお茶目なところもあるおじいちゃんで、鉄を使えと言って譲らぬ学者に、「月に1回しか来ないから誤魔化した」とか言っちゃう辺り、ユーモアで包んでいますが、やっぱり確固たる信念も感じさせてくれるのでした。
日本の古来からの建築物は、釘を一本も使わず、木と木を組み合わせて1000年以上持たせることで、法隆寺などの最古の木造建築物という世界遺産を生んできました。しかし、そうした神社仏閣の修復などとともに育ってきた林業は、今回の薬師寺の大伽藍復興さえ支えきれないほどに先細りしてしまい、西岡さんは台湾に飛んで、木を見定めなければならなくなってしまいます。
世界最高の高さを誇るスカイツリーとやらが先日、できたところですが、まさか法隆寺のように1000年も残ることはありますまい。そうして、誇る日本の建築という技術が失われる時、いったい、どんな殺伐とした国になっているのか、あるいはこのまま福島から放射能を垂れ流し、日本中に放射能に汚染された瓦礫をばらまいて、日本という国に住めなくなってしまうのではないかと危惧していると、日本という国の文化はまさに当の日本人自身によって守られず、破壊されてきたのだなぁという思いがして、暗澹たる気分になってしまうのでした。
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