監督:ケン=ローチ
出演:ロビー(ポール=ブラニガン)、ハリー(ジョン=ヘンショー)、アルバート(ガリー=メイトランド)、ライノ(ウィリアム=ルアン)、モー(ジャスミン=リギンズ)、レオニー(シヴォーン=ライリー)、タデウス(ロジャー=アラム)、ロリー=マカリスター(チャーリー=マクリーン)、ほか
見たところ:シネマジャック&ベティ
2012年、イギリス・フランス・ベルギー・イタリア合作
たきがは大好き監督のお一人、ケン=ローチさんの最新作にして最大のヒット作です。
生い立ちの悪さも災いして職もない、金もない不良青年ロビー。愛するレオニーとのあいだに子どもが生まれることを知り、立ち直ろうとするが、今は300時間の社会奉仕を命じられた身だ。だが、それで初めて信頼できる大人ハリーに会ったロビーは、ウィスキーのテイスティングという才能に目覚め、愛する息子ルークが生まれたものの、相変わらず前途は多難だ。しかし、ハリーに連れていってもらったウィスキーの試飲会で、最近発見された樽が100万ポンドのオークションにかけられると知り、同じ社会奉仕の仲間、アルバート、ライノ、モーを誘って、一世一代の賭けに出る。ウィスキーマニアのキルト野郎に扮した4人は、オークションが行われるバルブレア蒸留所を目指してヒッチハイクの旅に出るのだった…。
心温まるコメディー。ただ、社会派のケン=ローチ監督なんで、「
ルート・アイリッシュ」とか「
Sweet Sixteen」とか「
麦の穂を揺らす風」とか「
ブレッド&ローズ」、「
ナビゲーター ある鉄道員の物語」(リンク先は全部レビュー記事)、「大地と自由」なんか見たんですが、ハッピーエンドは少ないんですよ。わしが見た中でもハッピーエンドと言えるのは「ブレッド&ローズ」くらいで、それでも主人公のマヤは不法就労がばれてメキシコに帰らされるし、めでたしめでたしで終わる話の方が少ない、という印象です。
だから、ロビーがレオニー、ルークと新たな旅立ちを迎えるラスト、エンドクレジットが流れるまで、いつロビーの親の代から敵対しているクランシーとか、2人の結婚に反対のレオニーの父とか親戚(赤ん坊とレオニーを見舞ったロビーをタコ殴りにした叔父とか)が現れて、2人の仲を引き裂くんじゃないか、あるいはロビー自身がクランシー相手に切れて、刑務所にブチ込まれるんじゃないかとずーっとはらはらして見てました。もう、エンドクレジットが流れるまで、ハッピーエンドなんか予想できなかったんで。
ロビーがアルバート、ライノ、モーと北を目指した時に、なんかいつものケン=ローチ監督と違う?と思い始めたものの、まだ安心できず、最後まではらはらしてましたよ、わしは。監督にしては中盤からコメディー色も強かったけどね!
ライノ役のウィリアム=ルアンさん、「Sweet Sixteen」にも主人公の友人役で出てたって… リアムのが取り立てられて、自分はないがしろにされたと思っちゃった親友か〜? でした。ピンボール、おっきくなったのね。
アルバート役のガリー=メイトランドさんも出てたけど、役柄はちょっと不明。しかし、この話はアルバートに始まり、アルバートに終わった。せっかく稼いだ2万5千ポンドも「飲みに行こう」って… でもアルバートはいい奴だ。こんな友だちがいたら、いろいろと大変そうですけど。
タデウス役のロジャー=アラムさんは「麦の穂を揺らす風」に出演。あれも悲しい映画だった。同じ自由と独立を求めていたはずなのに、別れ別れになってしまったアイルランドの物語… キャストは不明。
ただ、コメディーではありますが、そこはケン=ローチ監督ですんで、いったん底辺まで落ちてしまうとなかなか這い上がれないロビーのような人びとの立場とかもちゃんと描いているので序盤はそこら辺が重いです。立ち直りたいのに周囲の理解がない。レオニーの理解のない親戚にタコ殴りにされたり、親の代から対立しているけど、もはやどっちもただの意地になっているクランシーとか、そこら辺のロビーの切なさはケン=ローチ監督だなぁと思ったり。
アルバートは初っぱなで登場、主人公と思わせておいてロビーに話がシフトしていく辺りなんかは良かったです。アルバートのゲロ壺の中身をロビーの仲間の一人が飲み干すシーンは、なかなかえぐかったですが…
名作。お奨めです。
たんぽこ通信 映画五十音リスト
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