敗戦記念日より、広島忌よりずっと遅れましたが、久々に見ました。
賛否両論あると思うんだけど、漫画は漫画として、映画は映画としてどっちも好きです、わしは。特に、「夕凪の街」のラストで、皆実が打越と旭を見守りながら亡くなるシーンは、漫画にはないシーンですが、よくぞこのシーンを作ってくれた!と思います。見るたんびに思います。
漫画では倒れた皆実はみんなのお見舞いを受けながら、目が見えなくなってしまい、最後に訪れた旭の顔も見られないで亡くなってしまいます。でも、皆実にとって水戸の旭に会いに行くことは母のためにもかなえたい夢だった。そのことがかなわなかったのを知ってるので、最初の方の旭に「会いに来る」と皆実が約束するシーンがまた泣けるわけなんですが、原爆で父と妹を失い、母も「1ヶ月も見ることができなかった」という特別な状況にあって、一家の中でただ一人、凄惨な原爆の記憶を持ち続けていた皆実にとって、5歳の時に別れた弟の旭は、きっと生きる希望そのものだったのじゃないか、旭に会いに行くために「蟻んこのように働いて」頑張れる、「幸せになってはいけないような気が」する世界で生きられる、でも、漫画では皆実と旭の再会は、皆実の目が見えなくなったために声だけで終わるわけなんですが、映画では旭が会いに来て、その旭と、皆実に「生きとってくれてありがとう」と初めて生を肯定してくれた愛する打越と並んで水切りをやっているシーンがあって、ああ、これは本来ならばなかったシーンかもしれないけれど、でも、頑張った皆実への映画からのご褒美なんだ、と思っとるのです。
旭役の伊崎充則さん、いい表情なさいますなぁ。17歳〜33歳(七波を身ごもった京花が出るので35ぐらいまで?)の幅広い年齢ですが、学生服着てる時は初々しい大学生であり、姉を慕う弟であり、背広を着たら社会人であり、一見頼りないようなんだけど、実は作中でいちばん重いものを背負った旭の隠された強さが伺えるようでした。旭は平野家の唯一の生き残りであり、被爆者の母と姉がおり、また被爆者の妻もいる、という、あの時代にはそれこそ無数の旭がいたかもしれませんが、その無数の旭を体現してるんだよね。逆に堺正章さんぐらいになると、その重さもどこへやら、なんか身軽で飄々と見えるけど、その人が背負ったものの重さなんてわかりはしないと思えば、これまた絶妙のキャスティングであり、そうして生き延びた旭と打越が皆実が亡くなったポプラの根元で再会する。しみじみ…
また見直したいと思いますです。
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