監督:ミルチョ=マンチェフスキー
出演:エッジ(エイドリアン=レスター)、アンジェラ(ローズマリー=マーフィー)、ルーク(デヴィッド=ウェンハム)、イライジャ(ジョセフ=ファインズ)、ネダ(ニコリーナ=クジャカ)、リリス(アンヌ=プロシェ)、ほか
見たところ:うち
イギリス・ドイツ・イタリア・マケドニア、2001年
4年ぶりに再見しましたが、どうしてこの作品にこんなに惹かれるのかわかったような気がしました。
全体を貫くタッチが船戸作品に似てるからなんですよ。それも「山猫の夏」とか「蟹喰猿フーガ」のような、わりと明るい方。日本語版の予告篇では「19世紀のカインとアベル」とか言ってましたが、そんな説教臭い話じゃなくて、全体の雰囲気はわりと殺伐している。そもそもルークなんかバリバリ人殺してるし。なにしろ死屍累々。
でも、何者でもなかったチンピラのエッジが、たまたま強盗に入った家の主、アンジェラと出会うことでアンジェラの孫になり、アンジェラが望んでいた死者の声を繋ぐ者になったように、ラストの清々しさは格別なものです。その時に、ああ、こりゃ、船戸小説だ… とわしは思ったのでした。
あと、ネダの娘、つまり後の老婆アンジェラを、イライジャはルークとネダの娘と勘違いして引き取ったくさいな、と今回、初めて気づきました。ネダの義母(つまりネダの本当の夫である「教師(ちなみに本名は出てこず、ずっと「教師」です)」の母親)なんか、そういう誤解させたの、わかってて押しつけてたよね、あの顔は。実際はアンジェラはルークではなく、オスマン=トルコ帝国が金貨12000枚の賞金を賭けた反乱軍のリーダー、「教師」とネダの娘です。
でも、イライジャはルークとネダの遺体が並べられているのを見て、しかもネダの義母、つまり教師の母親が赤ん坊を手渡したんでルークの娘と勘違いした、ように思えました。
ジャンル的にアクションなんだかヒューマンなんだか歴史物なんだかという感じで、これ!という決め手はない映画ですが、むしろ、これこれというジャンルに囚われない傑作です。
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