上橋菜穂子著。偕成社。
「守り人」シリーズの上橋さんのデビュー作。
とても美しくてとても悲しい物語。
人間が北米・南米・アフリカ、オセアニア大陸で繰り返してきた滅びの歌。その未来予想図。
けれどそこに生きる人びとはまたしなやかにたくましく、悲しみを乗り越えて、未来に希望をつなぐ。
アボリジニの研究家であり、文化人類学をフィールドワークという現場で学ばれた上橋さんの眼差しはとても温かく、とても鋭い。
「うす暗い岩屋の中で、老人が少女に歌をうたってきかせている。少女にはまるでわからないと知りつつも、老人はいつか、だれかにつたわることを夢見て、たいせつな秘密をこめた歌を、ひくい声でうたいつづける…。」(初版あとがきより)
神は人がいなければ生きていけない。宗教とは人があってのものである。
しかし、精霊は人を生かす。この大地に足をつけて、人は生かされているということを忘れてはいけない。
そんなことを思いました。
[0回]
PR