長い長い梅雨が明けた。全国津々浦々で豪雨が相次ぎ、どこも記録的な降雨量になった今年の梅雨。
梅雨が明けたら夏が来る。暑いのはまだ我慢できるが、最近は冷房の寒さに我慢できない夏が来る。
でも、8月3日、なんかいつもの夏と違う。なんかいつもの空じゃない。
たきがはの覚えている夏の空は、天高く聳える入道雲である。真っ白な入道雲と青い空、みんみん、じーじーとうるさく鳴きわめく蝉の声、子どものころの記憶はいつもそんな夏だった。あの御巣鷹山に日航機が落ちた時も、長野の空は天をつく雲と目に痛いような青さだった。某国営放送のニュースが延々と写す搭乗者の名前の列、明日はうちに帰るという家族旅行の日、ふとつけたテレビではその異様さだけが翌朝まで止むことがなく。
「御巣鷹山ってどっちの方?」「もっと北の方じゃない?」
その方角もわからず。
そういえば、ここ数年、あんな入道雲を見た記憶がない。今年の空にも、あんな雲がいない。
暑さだけは毎年やってくる。じっとしていても汗ばむ夏がやってきた。
でも、入道雲のない夏はどこか借り物のような空で。
青と白のコントラストのない空は、どこかに忘れ物をしてきたようで。
日本の食卓から季節が失われて久しいけれど、日本の空も季節をなくしたのだろうか。
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