金庸著。岡崎由美監修。小島瑞紀訳。徳間書店刊。全7巻。
サブタイトルは「魔教の美姫」でして、いよいよ、第一ヒロインの任盈盈(じんえいえい)が登場しますが、スペックが凄すぎるのに、どうして令狐冲にべた惚れなんだかよくわからない展開です。うーん、令狐冲も魅力的な人物ではあるんですが、なにしろ前巻で岳霊珊のことで悶々としてたもんで、どこがいいんだ、そんな小娘とか思ってたので、任盈盈が惚れる理由がわからん… 確かに秘曲・笑傲江湖の楽譜を渡しはしたけど、うーん、よほど男に免疫がないのか… しかし剣を取れば4人の高弟子と渡り合い、琴を弾きこなし、絶世の美女と来ております。しかも魔教の前当主の娘と人物紹介にも書いており、邪派の人間には絶対的な権力まで持っているのです。どんだけスペック高いんだよおら。
しかも最初のうちは任盈盈が令狐冲を助けるべく、邪派の連中を総動員して、あの手この手で令狐冲の健康を回復させようとしてますが、その事情が令狐冲には知らされないもので、ますます崋山派の総師・岳不羣の不興を買う羽目になり、登場人物紹介のページで岳不羣の妻で、令狐冲が師娘と慕う岳夫人が「夫に疎んじられる令狐冲を何かとかばう」と書いてあるけど、実際には全然、そんなことなくて、夫婦揃って、令狐冲を疑ってるようにしか読めず、とうとう、令狐冲は崋山派を破門されてしまうのでした。あらまぁ…
しかし、捨てる神あれば拾う神ありと言うとおり、少林派(嵩山派がてっきり少林寺かと思ってたら、別に少林派がありました)の高僧が令狐冲に込められた8つの気と、そのせいで負っている不健康を治すための秘伝を授けようとしてくれたのに、まだ岳霊珊にふられたというか、見捨てられたことを根に持っている令狐冲、二君に仕えずと言えば格好はいいですが、半分以上、意固地になって少林派に弟子入りし直すこともせずに自分の人生を見限ってしまいます。
ところが、さすがは主人公、こんなものじゃ死にません。崋山派から破門され、邪派の剣術を身につけたと師匠に疑われた令狐冲は、正派、さらに任盈盈の命で邪派からも命を狙われる身となりますが、同様に邪派に追われる凄腕の老人、向問天(こうもんてん)を義によって助太刀したことで彼と親しくなり、もともと崋山派などに収まる器ではなかったんでしょう。正派、邪派の不倶戴天の対立をも越えて、知己を得て、さらなる運命に立ち向かっていくのでした。
結局、正派・邪派と分かれている江湖を、令狐冲が最終的にはまとめるような感じで終わりそうです。そうしないと魔教の任盈盈とも結ばれなさそうだし。だいたい、正派・邪派といっても、結局は使う人間の問題なんで、前巻で曲非烟をぬっ殺したのは正派の人間だったし、秘曲・笑傲江湖を生み出したのは正派と邪派の人間だったし、登場人物がやることはえげつないのは、簡単に人を殺しちゃう「水滸伝」の世界だなぁと思いました。
それにしても東方不敗が名前しか出て来ませんが、その名に恥じずにすごく強いらしいので出番が楽しみですが、毎回、新しい人物がどって出て、半分くらいは殺されちゃったりするんで覚えるのが大変。
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