監督:黒澤明
出演:渡辺勘治(志村喬)、小田切とよ(小田切みき)、助役(中村伸郎)、大野係長(藤原釜足)、野口(千秋実)、小原(左卜全)、坂井(田中春男)、渡辺光男(金子信雄)、光男の妻(関京子)、勘治の兄(小堀誠)、その妻(浦辺粂子)、陳情の主婦(菅井きん、三好栄子、本間文子、ほか)、小説家(伊藤雄之助)、ヤクザの親分(宮口精二)、ヤクザの子分(加東大介)、ほか
音楽:早坂文雄
1952年、日本
わし的には黒澤映画ベスト5の一本です(あとは「白痴」「七人の侍」「我が青春に悔いなし」「生きものの記録」。うぉっ、「赤ひげ」が入らん)。この時期の黒澤映画では唯一、三船敏郎さんが出ていませんが、キャストを見てもはまりどころがありません。小品ではないけれど、大作ではない。でも確実に何かが残る傑作です。
特に、わしが一等好きなのは陳情のおばちゃんたちで、市役所に近所のどぶ板を何とかしてと言いに来たのにそこら中、たらい回し、でも最後は「市役所でも何か作れる」ことを求めた主人公によって、公園を作ってもらい、工事中に視察に来れば、傘を差し、その恩で葬式に来、その姿が初見から大好きです。もうね、
黒澤映画でおばちゃんがいい映画は外れなしとわしは思いました。「赤ひげ」しかり「どですかでん」しかり。大好きだ、おばちゃんず。特に雨の中、工事を視察する主人公が胃がんを押しての仕事なわけですし、工事中なので足下も不安定なのですよ。そこでよろければ、ブルドーザーをものともせず、ついてきた市役所職員も押しのけて傘を持って走る菅井きんさん演ずるおばちゃんの優しさは何度見ても号泣もんです。
後はやっぱり主役の志村喬さんが不器用なおっさんでいいですな。実の兄には「おまえのような脂性が」とか言われて、途中で小田切とよさんとの関係を「老いらくの恋」とか疑われてますが、まぁ、その口べたなこと、見てていらいらしつつ、でも頑張れと応援したくなる、いとおしさよ。葬式に使われた写真の表情のいいことよ。
傑作です。
たんぽこ通信 映画五十音リスト
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