監督:ジョン=フォード
出演:ヒュー=モーガン(ロディ=マクドウォール)、アンハラド=モーガン(モーリン=オハラ)、モーガン父(ドナルド=クリスプ)、モーガン母(セーラ=オールグッド)、グリフィド牧師(ウォルター=ピジョン)、ほか
まだまだ続くぜ、ビデオ鑑賞。しかし、特にこの時代(1940〜1960年代)のハリウッドは珠玉の名作が多くて、ビデオで見るのがもったいないくらいですよ。
ジョン=フォード監督の西部劇かと思っていたら、実はイギリスの炭鉱のある谷の話だったことが作中で判明。そう言えば、「静かなる男」も故郷のアイルランドに帰ってきたジョン=ウェインの話で、ジョン=フォード監督自身はアイルランド移民の子だそうで、アメリカ以上に郷愁が強いのかな〜と思いました。
一家揃って炭鉱で働くモーガン家の末っ子ヒューの目をとおして、移りゆく谷を描く。
なんというか、しみじみとした映画です。そう言えば、イギリスと炭鉱では「ブラス!」という名作もありましたが、音楽は切っても切れない関係にあるようで、こちらでも炭鉱から家路につく炭鉱夫たちが、合唱しながら帰るという図が何度も見られます。また、教会でも唄い、結婚式でも唄い、葬式でも唄い、果ては女王陛下の前で唄うよう召喚されちゃったりして、まるでミュージカルのごとく、唄にあふれた映画でありました。
ヒューには兄が5人と姉が1人いて、その兄たちも父も全員、炭鉱で働いています。だから、ヒューは家族でただ一人学校に行ったのに、自分も炭鉱で働くことに何の疑問も持ちません。ただ、最初のうちは炭鉱の経営者とそれなりにやっていた炭鉱夫たちも、不況の波に呑まれると、組合を作ったりという動きが見られます。でも、長兄は結婚して谷に残ったものの事故死、4人の兄たちも2人ずつ谷を離れ、アメリカやニュージーランドに行ってしまったことが判明、炭鉱の経営主の息子と求められるままに結婚した姉も、実はグリフィド牧師への思慕を抱えたまま、嫁ぎ先の南アフリカから単身帰国、離婚が噂されるようになってしまいます。そうして、最後は一家の父の死で幕を閉じるわけですが、そうした激変していく家族を支えるのが、肝っ玉母さんであります。息子たちの組合に反対し、ストにもいい顔をしなかった父さんが、他の炭鉱夫たちに裏切り者呼ばわりされた時に、男たちだけの集会に参加、雄弁を振るったりしてます。ううむ、モーリン=オハラさんが、後にこういう母さんになっていくのを思うに、ジョン=フォード監督の女性の好みは強い女がキーワードか?!
話はヒューの視点で進むのですが、家族にもいろいろあり、グリフィド牧師も姉との仲を噂されて谷を離れなければならなくなったりと、波瀾万丈でありました。
でもラストは「我が谷は緑だった」で占める。この感覚、万国共通の望郷の思いなんだろうなぁと感じ入ります。たきがは、そういう原点の光景というものを持ちませんので、逆に故郷とか、うらやましいなぁと思いました。
たんぽこ通信 映画五十音リスト
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