監督:ヴィクター=フレミング
原作:マーガレット=ミッチェル
出演:スカーレット=オハラ(ヴィヴィアン=リー)、レット=バトラー(クラーク=ゲーブル)、メラニー=ウィルクス(オリビア=デ・ハビラント)、アシュレー=ウィルクス(レスリー=ハワード)、ジェラルド=オハラ(トーマス=ミッチェル)、エレン=オハラ(バーバラ=オニール)、マミー(ハティ=マクダニエル)、スエレン=オハラ(イヴリン=キース)、キャリーン=オハラ(アン=ラザフォード)、ミード医師(ハリー=ダベンポート)、プリシー(バタフライ=マックィーン)、インディア(アリシア=レット)、チャールズ=ハミルトン(ランド=ブルックス)、フランク=ケネディ(キャロル=ナイ)、ベル=ワトリング(オナ=マンソン)、ビッグ・サム(エベレット=ブラウン)、ピティパット=ハミルトン(ローラ=ホープ・クルーズ)、ほか
見たところ:シネマ・パレット
アメリカ、1939年
たきがはがハリウッド映画史上の最高傑作を自認する大作映画です。午前十時の映画祭でかかったので、そろそろ見た回数が両手の指では足りなくなってきた感もありますが、まぁ、あんまり真面目に数えてないので正確なところは知りませんが、また行ってきました。そうなんだよ、またかと思ったって行きたくなる映画なんですよ、こいつは。何度見てもいいものはいいんですよ。
で、今回はまたいろいろと発見があったので、つらつらと書き連ねてみようと思います。
・レットのスカーレットへの愛情が冷めたのは、スカーレットが「もう子どもは産みたくないからセックスも嫌(意訳)」と言った当たりから下り坂になってた
この後、酔っ払ったレットが勢いでスカーレットとやっちゃって、スカーレットは逆に満たされて明るい顔になっているのに、そうと気づかずに冷酷にボニーを連れてヨーロッパへ行くなどと言い出したのは、だいぶ愛情が冷めてきたせいなんだろうと思いました。その後、ボニーを失って二人の仲は破局に向かっていきますが、メラニーの死でスカーレットがアシュレーの世話を頼まれたことでレットが二人の仲を勘ぐり、とうとう出ていくのはスカーレットの自業自得もあるだろうけど、レット自身にもだいぶ責任があるなと思いましたが、スカーレットは何しろ映画の初っぱなですでに男にちやほやされるのに慣れてる高慢ちきなもんで、レットみたいなタイプの男性はほとんど初めてなんですな。なので彼が未だに自分を愛してくれてると思って気を遣ってやるとか優しい言葉をかけるとか、そういうことができなかったのもレットがスカーレットを愛するのに疲れさせてしまったんだろうなと。
あと、「スカーレットの代わりに甘やかしていた」と言った愛娘のボニーを失ったことも大きかったのは言うまでもないでしょうが。
・アシュレーの中途半端な態度も悪い
まぁ、これはさんざん言ってるんですけど、スカーレットがなにしろ色眼鏡をかけてアシュレーを見てるもんで、格好良さが本来よりも当社比500%くらいの割合で急上昇してるんで、ほんとはもっと優柔不断な決断力のない、でも優しい男なのにそう思わせないところが小ずるいというか、意外と立ち回りは巧いというか、四六時中猫かぶってて、本音を言えるのはレットとほぼ召使いだけというスカーレットなんかにはアシュレーのそういう汚さって最後までわからなかったんだろうなぁと思いました。
安全パイというより、なにげにスカーレットの好意も残しつつ、でもメラニー愛してるなアシュレーはけっこうあくどいなと。
・スカーレットとレットは本人たちが言うほど似てない
どっちも自己中で我が儘でタフであんまり品はないタイプだと思いますが、スカーレットの根っこにあるのはタラで、レットのような旅生活というのは無理だなと中盤で思いました。この違いは大きいかと。まぁ、これでスカーレットがメラニーよろしく旅に出たレットを待ち、大きな心で迎え入れる性格だったら、めでたしめでたしなんでしょうが、そうじゃないのがこのヒロインのいいところにして欠点でもあるので、万事が自分中心じゃないと気が済まないし、間違っても「私待つわ」タイプじゃないので無理なんですが。逆のがいいのかもしれませんけどタラ抜いたらスカーレットじゃないしね。
・黒人たちの役柄は「アンクル・トム」
ただ、これは映画だとだいぶ差別はなくされているそうでして、そこはプロデューサーのセルズニックがかなり気を遣ったそうです。というか、スカーレットの周囲にいる男性のほとんど(レット除く)がKKKの一員だとか、原作を読んだら引っ繰り返りそうな展開みたいです。Wiki情報ですが。
それでもマミーやビッグ・サム、プリシーらの献身ぶりは奴隷の延長まんまで、原作の舞台がそういう時代だったとはいえ、見ていて気になるところではありました。
・スカーレットの初婚の相手チャールズ(メラニーの兄)は気弱なザエボス=ローゼンバッハ
に見えたという話です。もちろんSFC版。
・旧日本軍って劣化南軍だよね
初っぱなのオークス屋敷(アシュレーの実家)で男たちが気勢を上げるシーンがありますが、レットが冷静に「北軍には大砲もあるから負ける」と言ったのを根性じゃなくて気品で勝つ!と一蹴したのを見て、レットには冷笑されますが(その前に自らの無礼さを謝ってますが)、ああ、どっかの軍隊そっくしと思いました。
あと、前半ラストに近いアトランタ駅での負傷兵たちの様子(スカーレットがミード医師を探して歩いていく)がだんだん俯瞰していって、そのうちにスカーレットも見えなくなり、でも、まだ画面からはみ出すくらいの負傷者というのは、こんなに広い場所じゃなかったろうけど沖縄戦での陸軍病院壕とかを彷彿とさせるシーンでした。
その時点ではもう薬も包帯もないとか言ってたのでさらに。麻酔なしで足を切っちゃって、切れたスカーレットが家に帰るシーンなんかもありましたし。
アメリカ軍が負けた日本に甘くて朝鮮に厳しかったのは地理的な要因もあるのでしょうけど、こんなところで共感とかしてたんじゃないですかね。
・ベル=ワトリングはほんとにいい女だった
レットとつき合いの長い酒場の女性です。作中では唯一、彼女に冷たくしなかったメラニーと2回会い、レットを最後に「あんたはそれだけ彼女(スカーレット)に惚れてるんだ」と突き放すシーンが印象的でした。
これぐらいでしょうか。
あとはスカーレットのいつも自己中エゴイスト我が道を(たとえ障害物があっても破壊してでも)突き進むのと、メラニーの聖女っぷり、レットの前半の問答無用の格好良さと後半の零落っぷり、アシュレーのいい人に扮した悪っぷり、スカーレットの妹たちの話が進むに従って影が薄くなっていくところ(最後の3/4には名前も聞かれないし顔も出ない)を堪能しました。
もうちょっとね、もうちょっとスカーレットにレットへの思いやりがあったら、きっとうまくいったんだろうなぁと思うんですよ。
でも、レットはきっとというか絶対、そんな高嶺の花(と言いつつ、自分と同類と見なしていた)なスカーレットを手に入れるまでが楽しくて、一生懸命で、逆に手に入っちゃったら、急に冷めていったようにも思えました。まぁ、スカーレットも悪いんですけど。いつまでもアシュレーに未練たらたらとか。
だけど、やっぱり、いちばん好きなヒロインという位置づけはこの先も変わらないように思います。
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