辺見庸著。NHK出版新書刊。
今度は東日本大震災に遭遇することで「書けなくなった」と言っていた作者が311について書いたエッセイです。
前作に比べると大幅にトーンダウンしているのは故郷の石巻が被災したこと以外にも病気をしたとか、諸々の事情も関わっていそうに思います。それでも何とか表現しようとする著者の作家としての業、かつて読んだ様々な本に求める思考と発想の手がかり、911後よりさらに不穏になった空気を感じ取り発する警告、サブタイトルが「わたしの〈死者〉へ」とついており、本文が始まる前に「死者にことばをあてがえ」という詩が挿入されているように著者は言葉を探し続け、発し続けるのでした。
作中で紹介される小説の世界を「歩く」と表現したところがあって、それはわしが「指輪物語」「ホビット」を読むたびに一緒にそこにいるような気持ちになり、最後のサムの「今帰っただよ」でまたこちらに帰ってくるというのと同じなんだなぁと思いました。
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