監督:シュエ=シャオルー
出演:王心誠(ジェット=リー)、王大福(文章)、鈴々(桂綸鎂)、柴(朱媛媛)、水族館の館長(菫勇)、ほか
音楽:久石譲
見たところ:横浜シネマ・ジャック&ベティ
2010年、中国
うちの母が見たいと言い出して行くことになりました。一応、公開中の映画につき、以下は続きにしまっておきます。
水族館で働く王心誠は、泳ぐことが何よりも好きな自閉症の息子・大福を男手ひとつで育ててきた。しかし心誠は、自分が末期の肝臓癌に冒され、余命わずかだと知らされる。最初は息子を一人で残していくことを不憫に思い、海で心中しようとしたが失敗、心誠は、大福が自分の死後も暮らしていけるように施設を探そうと決意する。その一方で、心誠はひとりで生きていく術を大福に教え込んでいくのだった。
見事にカンフー・スターの気配を消した李連傑が、名作「
ダニー・ザ・ドッグ(リンク先はレビュー)」に続いて新境地を開きました。何よりも息子のことが心配な王心誠からは、とてもカンフーの達人という雰囲気は感じられません。でも、息子のことで笑い、怒り、泣き、想う心誠は、何より「少林寺」以来、わしが慣れ親しんできた李連傑でありました。そう、彼の人の良さそうな、愛嬌のある笑顔がここにはたくさんあります。
お父さんも一生懸命ですが、周りの人たちもいい人ばかりで見ていてほっとします。小売商店の柴さん、実はお父さんのことが好きで、お父さんも気づいていますが、上のような事情のため、応えられません。それに大福が7歳の時に亡くなったというお母さんが、実は事故死ではないと作中でお父さんから館長さんに語られるのも、そのシーンに前後する母と息子の海辺でのふれあいのどこか危うげな雰囲気と相まって、どうも自殺ではないか?とお父さんが疑っているのがわかり、それだけに余計、柴さんにお父さんとしては応えるわけにはいかないのがまたもどかしいです。どう見ても相思相愛なんですが… お父さん亡き後の柴さんが、幸せをつかんでほしいと思いました。「あなた以外の男なんて」なんて言っちゃってるんで…
水族館の館長さん、実は「
SPIRIT(リンク先はレビュー記事)」に親友役出てたのね〜! 全然覚えてなかったよ、俺…orz ま、いいや!(←いいのか) 館長さん、いい人なんだもん! お父さんが生きているうちは「あんたの願いで大福を雇ったけれど」と言って、水族館のスタッフにしてくれてたけど、お父さんの葬式では大福が引き取られた施設の寮長さんに「わたしも保護者に入れてください」って言ってくれて、わし、何度ももらい泣きしました。
親子のふれあい、お父さんの周りの人とのふれあい、大福のわずかな人とのふれあい、温かい視線と周りの人の温かい気持ちが見ているこっちもあったかくしてくれて、大福が1つずつ失敗しながら、お父さんに教わったことをだんだん覚えていくシーンも丁寧な描写がまた良し!
ヒロインの鈴鈴は水族館に来た雑伎団の道化師です。道化師なのに笑いもせずにお手玉しているシーンで大福を見て笑うところでは、大して描かれてもいないんだけど「孤児だった」と語る彼女の孤独さを表しているようだし、そんな鈴鈴が大福のペースでつき合ってくれるシーンもほんわかしました。
残念ながら彼女は移動してる雑伎団なので、ある日、大福に別れも告げられずに去っていってしまうのですが、無人の水族館の中で鳴る電話は、もしかしたら鈴鈴からの電話かも、と思わせるちょっと甘いロマンスの香りがしました。
最後、お父さんが亡くなって一人で水族館に通う大福が、ちゃんと教えられたとおりに掃除をし、一人でバスを乗り降りし、施設の部屋に帰ってきた時に、お父さんがいつも直していたテレビの上に置いていたぬいぐるみ(柴さんからの誕生日プレゼント)をソファに置き直したシーンで、大福の成長がうかがえて、安堵する。そんな、温かさにあふれた映画でした。
1つ注文をつけるなら、音楽がけっこううるさく、ともすれば暗くなりがちな話のなかで明るいのはいいんですけど、なんか気になるなぁと思っていたら、案の定、久石譲だったよ! なんとかしてくれ、このおっさん。
たんぽこ通信 映画五十音リスト
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