出演:カール=エーリッヒ(ジョン=ウェイン)、ジェフ(デビッド=ファーラー)、エルサ(ラナ=ターナー)、ほか
監督:ジョン・V=ファロー
ジョン=ウェインの異色海軍もの。まず、ドイツ人の役です。しかも戦艦とかではなくて老朽貨物船の艦長です。日本語タイトルは「男の魂」ですが、原題が「The Sea Chase」というので、かなりの意訳ですな。おそらく、語り手であるジェフがカールについて「男の魂」みたいなことを言うので、そこから取ったものと思われます。1955年と古めですが、「
捜索者」の前年なんで、脂ののっていた時期かな〜と思ったり。それにしてはWikipediaの一覧から漏れているんで、ジョン=ウェインの映画としては興行的にあんまり良くなかったのかも。
ドイツ帝国の元海軍、カール=エーリッヒは、現政権のナチスを批判したことで左遷され、今は老朽貨物船エルゲンストラッセ号の艦長だ。その親友でイギリス人のジェフは、シドニーでカールに再会したものの、ドイツのポーランド侵攻のためにカールを追うことになる。だが、ジェフの推測を外してエルゲンストラッセ号は太平洋に消えた。ジェフはカールを捕まえることができるのか?
時は1939年9月のオーストラリア。と明言されているわけではありませんが、エルゲンストラッセ号がシドニーを発った翌日あたりで開戦したという話をイギリス側でしているので、時期的には第二次世界大戦が始まったばかりと考えるのが筋でしょう。
で、ジョン=ウェインがドイツ人をやってるわけですが、おそらく、出演者もほとんどアメリカ人だと思いますが、ドイツ人なのに、アメリカ映画ですんで、しゃべってるのは英語ってのがアメリカ映画です。でも、ジョン=ウェイン演じる艦長ですんで、ナチスのシンパってはずはなくて、第一次世界大戦にも参戦した古強者で、ドイツ帝国に今でも誇りを持っており、ナチスを批判したために海軍にいられなくなったという、いかにもな役所です。
で、イギリス人のジェフは、家族ぐるみでカールと親友だってんですから、その国際的なおつきあいにはどういう理由があるんでしょうかね。特に語られてませんけど。ただ、ナチスばりばりの時代に未だにドイツ帝国の旗を持っているという頑固なカールに対して、おぼっちゃまくんな気分が抜けない、熱血漢というキャラクターは、アメリカ人の描くイギリス人士官って感じなのだろうかと思いました。
エルサというのはこの話のヒロインで、名前のあるただ一人の女性で、唯一のお色気どころ。晩年のジョン=ウェインものだと、こういうお色気の存在さえなくなるので、まだ若いんだなぁとは下衆の勘ぐりってものか。実はドイツのスパイで、オーストラリアにいられなくなってエルゲンストラッセ号に乗船することになったんだけど、その前にジェフが「結婚するんだ」ってカールに紹介してた彼女だったりもします。でも、カールが彼女が素人女じゃないって気づいたんで、ジェフの前から姿を消したはずなんだけど、結局、カールと一緒に逃げることになったという、いろいろと複雑な人です。
ただ、この時代のアメリカ映画って、ナチス=ドイツのことはばりばりの悪役に描きがちだったのではないかと思いまして、そんな中でのカールという存在は異色であるわけなんですが、骨のある男として描かれるのはちょっと珍しいかもと思ったり。それにしても、何でジョン=ウェインにこんな役振ったんだろう?と思わなくもない映画であります。ジョン=ウェインが演じるから気概のある元海軍という役になったのかと思わなくもありません。
話としては可もなく不可もなくって感じです。
そういやラスト、死んでるような生き延びたようなのも、ジョン=ウェインの映画としては珍しいか。
たんぽこ通信 映画五十音リスト
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