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されど平穏な日々

日々のつぶやきと読んだ本と見た映像について気まぐれに語るブログ。Web拍手のメッセージへのレスもここ。「Gガンダム」と「ジャイアントロボ」への熱い語りはオタク度Maxにつき、取り扱い注意! 諸事情により、コメントは管理人が操作しないと反映されません。時々、サイトの更新情報など。

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太白山脈 第6巻

趙廷來著。伊學準監修。川村湊校閲。筒井真樹子、安岡明子、神谷丹路、川村亜子共訳。集英社刊。全10巻。

サブタイトルは「女パルチザンの死」です。誰か知っているキャラクターかと思ったら、すでに死んでいるパルチザンの女性の死を沈宰模(シム=ジェモ)が見かけるということでした。これで沈宰模も人民軍に投降かと思ったらさにあらず、軍隊は何かと煩悶しつつ、まだ任務に忠実な軍人です。

廉相鎮(ヨム=サンジン)たち左翼への攻撃は掃討作戦となった凄まじく、多数の犠牲者を出しました。そのため、主要なメンバーはまだ無事ですが、栗於(ユロ)を放棄しなければならなくなり、勢力の温存を図っているところです。

そして第2回の国政選挙が行われましたが与党は惨敗し、徐民永(ソン=ミニョン)が筏橋(ボルギョ)の影の実力者ぶりを発揮してます。沈宰模解放の時にも議員の崔益承(チェ=イクスン)を脅したりしたんですが、そのレベルも越えて、崔益承を落選させようと暗躍しちゃいます。この方、クリスチャンで、もともと両班(ヤンパン)という貴族の家柄なんですが、自分の農地を小作人たちに解放し、夜学もやるという左翼っぽい活動をしてまして、真っ先に有島武郎が思い浮かびました(有島武郎の名前が思い出せずに森雅之さんの名前でググったのは内緒ですよ?)。金範佑(キム=ボム)や孫承旻(ソン=スンホ)、沈宰模らが先生と敬う知識人です。

さらに、とうとう朝鮮戦争が勃発します。怒濤の勢いで南下する人民軍に対し、なすすべもなく退却していく国軍は、首都をソウルから太田(テジョン)、大邱(テグ)へと移し、次巻で釜山(プサン)にまで追い詰められるのでしょう。
そして、筏橋の穏健な警察署長だった権炳済(クォン=ビョンジェ)でしたが、やっぱり警察官なので左翼を嫌悪しており、国軍を支援するアメリカに期待したり、転向した元左翼の人たちを加入させていた輔導連盟を射殺しちゃったりとやばい方向に向かいつつあります。ただ、良心の呵責を覚えるというので全明煥(チョン=ミョンファン)医師だけ逃がしてますが、輔導連盟に加入させた李知淑(イ=ジスク)や素花(ソファ)は逃走していて無事でしたけど、筏橋に残っていたら、やっぱり殺しちゃったんだろうなぁという描写が、警察はしょせん警察という感じがぬぐえません。
むしろ栗於に新しく来た警察支署長の李根述(イ=グンスル)という人物の方がまともです。まぁ、この人は解放後に逃げ出さなかったただ一人の警官と書かれているので、そうすると権炳済は逃げ出したんだろうから、そうなっちゃうんでしょうけど。

そして、金範佑がソウルに行ったことで新聞記者の李鶴松(イ=ハクスン)という人物がけっこう描かれるようになって、こちらも拷問受けたり、転向させられたり、人民日報の記者になったりと波瀾万丈です。

素花ちゃんの趙社長のクッが1章分取られて、扱いは大きかったんですが、いつも賑やかな女性たちの活躍はわりと少なめな巻でした。

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太白山脈 第5巻

趙廷來著。伊學準監修。川村湊校閲。筒井真樹子、安岡明子、神谷丹路、川村亜子共訳。集英社刊。全10巻。

サブタイトルは「歴史の逆流」です。そのタイトルのとおり、権力者の反撃が多い巻です。筏橋(ボルギョ)の戒厳軍司令官だった沈宰模(シム=ジェモ)でしたが、その存在を快く思わない地主たちや青年団の監察部長に降格させられた廉相九(ヨム=サング)や討伐隊(中身は警察)の林萬洙(イム=マンス)らの策謀により容共行為で逮捕されてしまいます。
また上海に亡命していて日本の敗戦後に帰国した朝鮮亡命政府の指導者、金九(キム=グ)が暗殺されてしまい、盛大な葬儀が催されます。金範佑(キム=ボム)は金九を支持していたので驚くとともにこの国の歴史が逆流しているという思いを新たにします。
筏橋に新たに赴任してきたのは白南植(ペク=ナンシク)という関東軍出身の右翼ですが、これがとんでもない乱暴者で何かと暴力を振るい、徐民永(ソン=ミニョン)や全(チョン)院長、李知淑(イ=ジスク)、孫承旻(ソン=スンホ)らを脅しにかかったり、争議を起こす小作人たちをすぐに留置所に押し込めたりとやりたい放題してます。
孫承旻は左翼とは訣別した思想の持ち主なのですが、白南植に無理矢理に国民輔導連盟の支部長を押しつけられそうになり、ソウルへ逃げ出します。左翼に与するつもりはないけれど右翼もまっぴらな中道思想の持ち主なので権力の手先になるわけにはいかないようです。ソウルにはすでに金範佑もいますからね。

もちろん廉相鎮(ヨム=サンジン)たちの反撃も激化しており、人手不足の戒厳軍はどうしても後手後手に回らざるを得ません。ただ、そのために徴兵制度なども敷かれるようでますます窮屈な国になりつつあります。
廉相鎮は党の方針でどこかに異動になり、宝城(ポソン)郡委員長の任を解かれます。後任は安昌民(アン=チャンミン)、廉相鎮の兼ねていた筏橋の地区リーダーは河大治(ハ=デジ)となります。
一方、安昌民が大けがをするきっかけとなった姜東植(カン=ドンシク)は妻の外西(ウェソ)宅が廉相九(ヨム=サング)に犯され、子どもまで身ごもったので自殺を図ったことを知らされ、復讐心に燃えたぎります。安昌民にけがをさせたことで自己批判した意味ないやんか…

沈宰模は金範佑や徐民永らの働きにより、この巻のうちに釈放されますが、今度は筏橋のある全羅南道よりももっと共産党の抵抗が激しいという38度線に近い忠清北道への配属が決まります。
またソウルには学徒兵に出陣させられたために中断した勉強の続きをやるために出てきた金範佑でしたが、この巻の最後の方では新聞記者になろうと決心します。裏表紙に粗筋が書いてあるんですけど、この人もけっこう激動の人生送るんだよね、この後… そう考えると金範佑って「火山島」の李芳根(イ=バングン)連想するんですわ。いちばん好きなキャラでしたからね。

そして大勢の小作人たちが待ち望んでいた農地改革法は、地主に有利な骨抜きな法にされてしまい、小作人たちの不満が日に日に広がっていました。ついに立ち上がった小作人たちに容赦なく振り下ろされる青年団や討伐隊による暴力。ますますの波乱を予感させて折り返し地点です。

レビューでは紹介しきれませんけど、地主から右翼学生から、小作人の子どもたちと、多種多彩な登場人物たちが次々に現れ、エピソードを紡いでいく様は鮮やかです。原文は全羅南道の方言を交えて書かれているそうですが、四季の移り変わり、農村の営み、季節を迎える人びとの心の機微などが目に浮かぶように書かれていて、まさに大河小説って感じです。まぁ、それだけじゃすまないんですけどね。日本人だから…

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太白山脈 第4巻

趙廷來著。伊學準監修。川村湊校閲。筒井真樹子、安岡明子、神谷丹路、川村亜子共訳。集英社刊。全10巻。

サブタイトルは「トラジの歌」です。トラジとは朝鮮語で「ききょう」のことですが、作中で金範佑(キム=ボム)が学徒兵として出陣させられ、米軍の捕虜となり、地球を一周してきて日本軍としてではなく朝鮮人として連合軍に協力したいと申し出、その訓練をハワイあたりで受けていた時に通訳となった二世の女性の名前でもあることがわかります。名字が都(ト)で、名前がラジで、続けて「トラジ」と読めるようにしたというエピソードが挿入されまして、彼女の影響を受けて、金範佑が左翼にも右翼にも距離を置き、民族主義を貫こうとしているという話が同僚の孫承旻(ソン=スンホ)に明かされます。

話としては山中に立てこもっていた廉相鎮(ヨム=サンジン)たちがいよいよ反撃に出るようになり、筏橋(ボルギョ)からわりと近い栗於(ユロ)という山間の村を解放区として支配することになります。
廉相九(ヨム=サング)に犯されて、とうとう身ごもってしまった姜東植(カン=ドンシク)の妻、外西(ウェソ)宅が自殺を図ったり、素花(ソファ)が鄭河燮(チョン=ハソプ)と再会したり、痛々しい展開が続きます。

戒厳軍司令官の沈宰模(シム=ジェモ)も廉相鎮に一杯食わされたり、奇襲したりと忙しいですが、なにより、地主よりも小作人に味方しがちな姿勢が地主たちに恨まれて、とうとう廉相鎮の部下の妻を妊娠させようと骨を折ったことで容共として訴えられ、司令官の地位も剥奪されそうな予感…

そんな沈宰模に思いを寄せる娘さんがいたり、鄭河燮がつき合っていた本屋の娘がいまだに彼のことを思っていたり、ここら辺はちょっとのほほんとした展開ですが、概ね、左と右が憎み合い、血で血を洗う話は最後まで止みそうにありません。朝鮮戦争の休戦まで描いているから当然なんですが、辛いところです。ただ、それ以上にエンタテイメントとしておもしろく、歴史大河小説の名にふさわしい小説だと思います。

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太白山脈 第3巻

趙廷來著。伊學準監修。川村湊校閲。筒井真樹子、安岡明子、神谷丹路、川村亜子共訳。集英社刊。全10巻。

サブタイトルは「金羅道の悲しみ」です。

そのタイトルにふさわしく、廉相鎮(ヨム=サンジン)とともに山に立てこもったパルチザンたちの筏橋(ボルギョ)に残った家族たちや、人情的な医師、全明煥(チョン=ミョンファン)、安昌民(アン=チャンミン)を愛する女教師、李知淑(イ=ジスク)らが負傷した安昌民をかばい立てし、治療したことで巻き込まれる病院事件と、鄭河燮(チョン=ハソプ)に金を渡していたことがばれてしまい、過酷な拷問を受けて流産する素花(ソファ)、鄭河燮の両親などの苦悶も描かれます。

わしは素花ちゃんのしていたことがばれるのは河大治(ハ=デジ)の妻、ドルモル宅(本名ではなくて既婚の女性の朝鮮風の呼び方。出身地の名を取る)とその息子たちと同居することになったため、子どもの何気ない一言からかなぁと勝手に推測してどきどきして読んでいたので、章(作中の台詞などがついていて、1巻当たり10章くらい)が変わったら、あっさり「捕まって拷問を受けた」とか描かれていたんで驚きました。

筏橋に戒厳軍の司令官として沈宰模(シム=ジェモ)が赴任してきまして、けっこう良心的なキャラなんですが、軍人としては国策・滅共に逆らうわけにはいかず、いずれ地主と小作人との板挟みになっちゃいそうで心配です。いっそ反乱を起こした第14連隊(麗水・順天事件)みたいに反旗を翻してくれればいいのですが、まぁ、そうはならない予感…。
警察署長も寝汚い南仁泰(ナム=インテ)から穏健派の権炳済(クォン=ビョンジェ)に変わったけど、警察だからな…

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太白山脈 第2巻

趙廷來著。伊學準監修。川村湊校閲。筒井真樹子、安岡明子、神谷丹路、川村亜子共訳。集英社刊。全10巻。

この巻のサブタイトルは「天空をさすらう雲」です。

筏橋(ボルギョ)出身の国会議員、崔益承(チェ=イクスン)が登場する第2巻です。話は山に逃げ込んだ廉相鎮(ヨム=サンジン)たちの家族にまで右翼たちの報復が及ぶ描写が多く、わし的に辛い展開が続きます。

金範佑(キム=ボム)は前述の国会議員のせいで警察に捕まって拷問まで受けてしまいますが、お父さんが金一族のトップ、金思鏞(キム=サヨン)なので助かります。ただ妻の兄が左翼に金を流していたということで捕まってしまっていまして、こちらはどうにもならないようです。

あと医者の鑑と言いたいような全明煥(チョン=ミョンファン)先生が登場して、思想に関係なく分け隔てなく治療するという良心を見せてくれますが、この方は第3巻で退場しちゃいそうな感じです。→追記、第6巻まで読み進みましたが、まだまだお元気です。筏橋唯一の医者なんで、そうそう退場はさせられませんね。

首都警察庁から討伐隊の隊長、林萬洙(イム=マンス)がやってきますが、それほど大きく物語は動かない感じでした。

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