辺見庸著。
先に読んだ「
もの食う人びと(コミック版)」の原作です。
いろいろな主人公を据えた「コミック版」に比べ、こちらはルポルタージュの体裁をとっており、ずいぶんと翻案したんだなとわかりました。
残念だったのは「コミック版」でいちばんいいと思っていた元従軍慰安婦の方の話が原作の半分以下のエピソードしか取り上げられておらず、むしろ、それ省いたら駄目やろ!なレベルになっていたことです。たとえば以下の部分。
自殺しようとする元慰安婦の方々(「コミック版」では1人でしたが原作では3人)にご飯をおごることになり、その体験を聞くだけの「コミック版」と異なり、原作版では著者がひたすら「死なないでください」と言い続け、その間にご両親の墓参りをしたりしています。この墓参りのシーンがわし的にはいちばん胸を打たれました。ご両親が亡くなってから、初めて言えたという「自分は日本軍の慰安婦だった」という言葉、生きているうちには決して打ち明けることができなかった壮絶な過去、そんなものを朝鮮に限らず、台湾やフィリピン、インドネシア、オランダなど、数多くの国々の女性に負わせた日本という国。そこから来たジャーナリストである辺見さんは、直接の加害者ではないにしても「あの日の記憶を殺してしまいたい」と言って自殺を図ろうとする女性たちに、ただ「死なないでください」としか言うことができない、その無力さ。そして、いまもなお、解決しようとせず、真摯に向き合おうとせず、反省もしない日本という国の愚かしさ。そんなものを代表させられることになってしまったジャーナリストの無力さ。そういうものが「コミック版」にはなかったのでした。
そこがいちばんショックだったんで、わりとほかのエピソードは忘却の彼方(爆
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