監督:今村昌平
原作:佐木隆三
出演:榎津巌(緒形拳)、その父(三國連太郎)、その母(ミヤコ蝶々)、その妻・加津子(倍賞美津子)、ハル(小川真由美)、ハルの母(清川虹子)、警部(フランキー堺)、河島弁護士(加藤嘉)、柴田種次郎(殿山泰司)、質屋の主人(河原崎長一郎)、ほか
1979年、日本
三國連太郎さん追悼企画、第3弾。主演は緒形拳さんですが、かなり重要な役所なんで… TSU○YAに古い映画ないもんで…
5人を殺害した挙げ句、78日間逃亡して捕まった榎津巌。彼は警察に連行される時も鼻歌交じり、取り調べにも反抗的な態度を示すが、別府の鉄輪(かんなわ)温泉で温泉宿を経営する両親、妻らの事情徴集もあって、次第にその犯行に至った軌跡が辿られていく。
実在の事件を元にした話だそうです。タイトルは聖書にある言葉をとったそうで、「悪に対して悪をもって報いてはならない。悪行をしたものへの報い=復讐は神がおこなう」ということらしいです。ふんふん…
わしはてっきり、巌と父の愛憎から、巌がぐれちゃったきっかけが、父が戦中、五島列島で漁師をしていた時に軍に船を徴集されそうになったのを「なぜカトリック教徒だけ全ての船を出さなければいけないんだ」と反対していたのに、巌自身のせいもあるんですが、軍人に鉄拳制裁を喰らったことで船を出し、逃げるように別府に移住、温泉宿を経営するようになったことへの反発から戦中は少年院に入れられるような悪で、戦後も詐欺を働き、奥さんとは見合いの当日に結婚を宣言(この当時では珍しいできちゃった婚)、詐欺罪でブチ込まれてるあいだに奥さんが逃げ出したものの、父の説得で再婚、しかし奥さん自身が「戻るのはお義父さんのため」と言っているように周囲が疑うような関係になるものの、一応厳格なカトリック教徒である父はそんなことはしてなくて、奥さんも結婚を機にカトリックに改宗したもんで、その一線だけは踏み越えていないのに巌は疑う気満々みたいな関係なもんですから、もう、巌がこんな5人も殺して、詐欺罪をやるような極悪人になったのは父への当てつけなんだと思って観てました。お父さんも厳格なカトリックっぽくふるまってるけど、そこは人間ですんで、聖人君子ってわけにはいきませんからね。そういう父親の醜さを巌は見抜いていたってことなんだろうかと。ラストでも死刑が確定した巌に面会に来た父が「おまえは本当に憎んでいる人間は殺せない。その程度の人間だ」と言ったもんで、これはそうとう、この親子は憎み合っていたんじゃないだろうかと思ったんですが、どうもそうではないらしいですよ、タイトル。
作者も、この極悪人を否定も肯定もしないという意味で、このタイトルをつけたそうなんで、聖書の解釈のまんまで合ってるみたいです。
しかし緒形拳さんは、こういう同情の余地もないような悪人やらせるとはまりますなぁ! ほんとに嫌らしいですわ。ただ、じゃあ、巌と敵対するような形の父親や妻に同情するかと言われるとそうでもなく。「こういう生き方」を肯定するには、あんまりな悪人なんですが、それだけで片づけてしまうには何というかそれも違うような気がしてしまいます。
ラスト、巌の遺言なんでしょう。遺骨を持って別府のケーブルカーで山にのぼったお父さんと奥さんは、山の上から遺骨をまきます。遺骨白すぎ〜! 遺骨多すぎ〜! という突っ込みは時代の古さのせいかもしれません。
この後、「衝動殺人〜息子よ」も観ようと思ったんですが、あれは三國さんじゃなくてトミィ(若山富三郎さん。故人)だったよ…
改めて、三國連太郎さんのご冥福をお祈りします。数々の名演技、ありがとうございました!
たんぽこ通信 映画五十音リスト
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