監督:内田吐夢
原作:水上勉
音楽:富田勲
出演:樽見京一郎/犬飼多吉(三國連太郎)、杉戸八重(左幸子)、弓坂主任(伴淳三郎)、味村主任(高倉健)、八重の父(加藤嘉)、萩村署長(藤田進)、ほか
三國連太郎さんが4月14日に亡くなられたそうで、追悼にDVD借りてきました。
1947年、北海道。岩内の町で強盗放火殺人事件があった日、津軽海峡に進路を変えた台風のため、青函連絡船・層雲丸の転覆事故も起こり、三人の不審人物が北海道から逃走する。そのうちの一人、犬飼多吉は、残る二人を殺して下北半島に渡り、大湊の町で行きずりの娼婦・千鶴(本名・八重)に情けをかけて行方をくらます。八重は多吉にもらった多額の金で借金を清算し、東京に出ていく。一方、犬飼らの起こした事件を追う函館署の刑事・弓坂だったが、犬飼の足跡は下北半島でぷつりと途絶えてしまい、10年の歳月が流れた…。
観たつもりでいたんですが、観ていたら、全然知らないシーンばっかりだったので、どうもちゃんと観たことがなかった模様です…
最初のうちは犬飼多吉の視点で、岩内の強盗放火殺人事件に発する大火事や、ちょうど居合わせた青函連絡船の遭難事故、それに紛れて逃亡する犬飼たちといった流れで進むのですが、下北半島に着いた犬飼が、列車で居合わせた八重の働く花やという置屋に行き、八重に大金をあげたところで視点が八重に移り、話の重点が八重になります。で、大金をもらった八重が、借金を返し、父を温泉に連れていって東京に出、飲み屋にいたり、置屋に移ったり、といった10年間をわりと丹念に追って、そこに執念深く犬飼多吉と、その存在を偽証したと思われる八重を追いかける弓坂刑事の動きなんかも入りますが、ここら辺は犬飼自身がどこかに姿をくらましたためもあり、完全犯罪が成立してしまっています。
ところが、10年後、八重が新聞で見たのは犬飼と思しき人物、しかし樽見京一郎と名乗る男でした。樽見に会いに舞鶴に向かう八重。樽見は白を切り通そうとしますが、八重に見抜かれてしまい、八重を殺します。それを書生に目撃されて、こっちも殺害。二人を心中事件に見せかけて殺そうとしたところでボロが出始めます。
八重の身元が簡単にばれてしまい、しかも弓坂刑事が東京まで追ってきたという辺りから、樽見が偽装する心中に疑いを抱き始める刑事たち。やがて、刑事を退職した弓坂まで引っ張り出して、樽見をつつきますが、八重にも白を切ろうとしたように、なかなかボロを出しません。
で、今度は物的証拠を固めようってんで、八重が10年間持ち歩いていた爪(犬飼多吉の爪を切ってあげたもの)が決定打となり、犯行を自供する樽見。ここまで、わしは犬飼が本名なのか樽見が本名なのかと思っていましたが、どうやら本籍のある樽見が本名で、犬飼は北海道時代の偽名の様子。弓坂さんは舞鶴に来るまで「犬飼」と言ってたんで。
けっこう熱血の高倉健が意外。その上司が藤田進さんてのがまた意外な味を出してます。
樽見視点は、けっこうあちこちで映像が加工されてて、刑事に追求されるまでもなく、罪の意識に苛まれつつ、10年も経つと、それも正当化しつつ、でも最後の最後で船から海に飛び込んじゃったんで、やっぱり、ただ一人の味方だった八重を殺した罪の意識は、他の三人よりもずっと重かったのだろうかと思ったり。しかし、最初の強盗事件は、樽見(この時は犬飼)は駅で待ってただけのシーンがあるんで、その罪まで負わされるのはどうかと思いつつ、その実行犯ぶっ殺してもいるんで、かなり複雑な性格を形成したものと思われ、そこんところは名優・三國連太郎さんですから、まぁ、何とも複雑な犯人像で、わしは、わりと好きな人が演ずるキャラに同情しちゃって観るんで、この場合は三國さんですから、まぁ、そこで言わなくてもいいような「心中」とか、八重を殺しちゃったりとか、観ててはらはらしました。
3時間と長丁場で、ちょっと中盤の八重のシーンがたるい感じもしましたが、おおむね名作です。
たんぽこ通信 映画五十音リスト
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