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されど平穏な日々

日々のつぶやきと読んだ本と見た映像について気まぐれに語るブログ。Web拍手のメッセージへのレスもここ。「Gガンダム」と「ジャイアントロボ」への熱い語りはオタク度Maxにつき、取り扱い注意! 諸事情により、コメントは管理人が操作しないと反映されません。時々、サイトの更新情報など。

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わが指のオーケストラ 第2巻

山本おさむ著。秋田書店刊。全3巻。

号泣必須の第2巻です。

2年生になった一作と、その担任になった高橋先生。
しかし時代はシベリア出兵、米騒動ときな臭い方向へ進んでいきます。
一作が仲良くなった松江(後の嫁)は両親ともに聾唖で、姉だけが健常者で工場勤務ですが、生活は困窮しており、一作からお昼ご飯のふかし芋をもらって食べてます。一作は母が実家を出、学校で働けることになったので(前巻で)、ともに寮暮らしです。
世界が広がっていく一作は、ふとしたことから富農の息子、山田くんから米を強奪する高等科の川田くんと知り合います。川田くんの仲介でやはり高等科の清水千代ちゃんを知る一作ですが、両親がともに聾唖の千代ちゃんは、馬小屋の2階で暮らしていました。
わしがやられたのは、この千代ちゃんと、手話を知らず、子どもの頃から家族に馬車馬同然に働かされてきたお父さんとのエピソードです。
米騒動で困窮する千代ちゃん一家。しかも母親が妊娠中のため、口減らしと金を稼ぐために学校を辞めなければならなくなってしまう千代ちゃん。そして苦しいなか、母親は出産しますが、出稼ぎに行かされる千代の身を案じて、高橋先生に訴えます。ここらへんから山本おさむ節の真骨頂でじわじわと泣かされるのですが、千代ちゃんが学校を退校になり、父親と挨拶に来まして、担任だった平塚先生が千代ちゃんについて語るわけですよ。もう、ここらへんから涙で読めない展開。
千代ちゃんは7時頃に登校してきた平塚先生より早く学校に来てました。どんなに早く来ても千代ちゃんのが早いのです。とうとう暗いうちに起き出した先生、その日は朝から雨でした。そこに現れる千代ちゃんと父親。幼い千代ちゃんを天秤に乗せてきた父親は、それまでは苦悩の表情しか見せていませんでしたが、千代ちゃんに微笑みかけてました。千代ちゃんちを訪ねた平塚先生はその事情を知ります。
千代ちゃんの両親は千代ちゃん(おそらく長女。下に弟妹が3人ほど)をなんとしても学校にやりたかった。兄夫婦に頼んで学費を出してもらいましたが、その代わり、父親の仕事は倍に増えました。父親は、暗いうちから起き出して、千代ちゃんを学校に送り届け、日の出とともに働きに出なければならなかったのです。千代ちゃんが自力で通えるようになるまで3年、父親は雨の日も晴れの日も千代ちゃんを学校に送り届けました。
だから平塚先生は言うのです。

「どんなに無念だったでしょう…
そうやって通った学校を辞めなければならない あの2人は…
あの2人の胸には…
どんな言葉が…」

だから千代ちゃんが学校を辞める時に「辞めたくない」と言って柱にしがみついたのです。その千代ちゃんを泣きながらたたいた父親。手話もできず、簡単な、野良作業で使われる言葉しか知らないという父親の無念さ。その、言葉にできない思いに、ただただ涙があふれてしまうのでした。

その千代ちゃんを駅まで見送りに行った平塚先生は櫛を渡しました。それは、先生と千代ちゃんを結ぶ思い出の品でもあったのです。

そして、千代ちゃんを見送る川田くん。2人と一緒に涙涙です。

この後、展開が急に速まって、口話法の西川親子の話とか入りますが、一作は高橋先生から教師を打診され、東京の師範学校に行くことになります。
また、一作と松江がいいムードになってますが、結婚は次巻までお預けです。川田くんと千代ちゃんは一作から結婚したことが知らされます。

さらに関東大震災で大杉栄夫妻や、朝鮮人が大勢殺されたことは有名ですが、聾唖者も殺されたという話が避難してきた一作の体験として語られます。

その一方で西川親子のエピソードも大きく割かれ、高橋先生は口話法の流れに抗うことになります。

口話法に翻弄される子どもたちのエピソードで次巻へ続きます。

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わが指のオーケストラ 第1巻

山本おさむ著。秋田書店刊。全3巻。

たきがはの号泣必須漫画です。著者は「遥かなる甲子園」と同じ山本おさむさん。「遥かなる甲子園」の次に描かれた作です。この話を読む前にアニメ映画化された「どんぐりの家」も見たんですが、あれもいい話じゃった…

友人がtwitterでこの本について言及しているのを見たたきがはは、著者が山本おさむさんだったので興味を持ちまして、翌日、新刊の文庫を大人(げない)買い。その時は完結していたかどうか定かではありませんが、第2巻で号泣しまくったのでした。

聾者の教育に一生を捧げた高橋潔さんを描いた本作。第1巻は高橋さんが大阪市立盲唖学校の教師となり、子どもたちに「安寿と厨子王」の絵本を手話で聞かせるまでです。
第1話で高橋さんの最初の教え子とも言える聾児、戸田一作が登場、彼は話が進むに従って成長していきまして、第3巻では教師になんかなっちゃったりしてます。この一作とのふれあいが第1巻では主軸に置かれており、理解のない親戚に囲まれ、まるで獣のようだった一作が、高橋先生と出会うことにより、言葉を知り、人とふれあい、という流れが、唯一の理解者である母親との葛藤とかなんかも交えて感動的に描かれます。1巻の泣きポイントは一作母子のふれあいでしょう。
ただ、これぐらいはすでに「遥かなる甲子園」で体験済みのすれた読者のわしは、第2巻でがつんとやられてしまうのですが、以下、続刊とします。

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正雪記

山本周五郎著。新潮文庫刊。

由比正雪の反乱に題材をとった歴史小説です。「樅ノ木は残った」と似た感じですが、あちらがわりと原田甲斐を中心に描いていたのに対し、由比正雪の周辺の人びとも描かれた群像劇な印象です。それも由比正雪の門下生に限らず、正雪と将来を誓い合った女性、はんとか、はんに思いを寄せる男性とか出てきて、さらに由比正雪の反乱自体が幕府によるでっち上げだったという結末は、解説にも書いてありましたが、幸徳秋水らの大逆事件なんかを連想させるのでした。

なので、わし的には大逆事件を思い描きながら、この小説を書いたという点が大事なので、結末も、正雪の考えも、いささかすっきりしませんし、ヒロインのはんに至っては理想的に描かれすぎなんじゃないかと思ったりもしましたが、これはこれでいいなと思いました。

実在の人物を描いた小説だと、ほかに「栄花物語」とかありますが、今度は短編を読む予定。

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ちいさこべ

山本周五郎著。新潮文庫刊。

表題作のほか、「花筵」「ちくしょう谷」「へちまの木」を収録した中編集です。

「ちいさこべ」は火事で全てを失った大工の若棟梁が奮闘するさまを描いた人情物。
「花筵」は女性物。
「ちくしょう谷」は、タイトルのように呼ばれる流人谷を立て直そうとする若侍が兄の仇を許そうとする話。
「へちまの木」は、1200石の旗本の三男坊が町人として生きようとして挫折しちゃう話、でした。

表題作の「ちいさこべ」がやはり良かったのですが、親を失った孤児たちを引き取って、やっぱり親を火事で失った女の子とくっつきそうなラストよりも、女の子(と言っても16、7歳くらい)が孤児のなかでも大きな男の子にしょっちゅう見られていて、棟梁が「男の子はそんなものだ」と性的な衝動を話しても、「いやらしい」と拒絶する気持ちがあったのに、子どもの方は実は彼女を「おっかさん」と慕っていたというラストが良かったですな。じんとした。こういうエピソードが周五郎さんは巧いです。

「ちくしょう谷」は、わしも興味のあるテーマなんですが、作者の言う

「人間が一歩でも人間を宥したとすれば、それはもう際限なく宥したということではないかね。ここまででストップなんてのは宥したうちにははいらないのじゃないかね」

が大事ですが、話としてはいまいちだったかも。

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遥かなる甲子園 第10巻

山本おさむ著。戸部良也原作。双葉社アクションコミックス刊。全10巻。

引き続き糸数高校戦です。4点を先制され、動揺するナインでしたが、武明が「野球が僕たちを自由にしてくれた」と呼びかけて、1点差まで追い上げます。最後のチャンスで打席には健、ランナーは武明。しかし、彼らは敗退し、ついに公式戦で1勝をあげることもなく終わってしまうのです。
最後は表紙にもなってますが、伊波監督を胴上げしたところで終わりです。今まで、ずっと武明たちしか表紙に描かれなかったのに、ここだけ伊波監督というのが、最後の試合の重みというか、伊波監督の存在感なんかも示されているなぁと。

もっとも、武明たちの戦いはまだ始まったばかりでした。学校を卒業した彼らは、本土へ就職します。ところが、これが今まで以上に厳しいというより、今までは学校という大きな単位があったので、苦しい時もみんなで立ち向かえたし、何より、父兄や教師といった力強い味方もいたのに、いきなり彼らは独りぼっちで放り出されてしまうのです。
武明は、せっかく仲良くなった先輩が別の支店に移されてしまい、倉庫係になったことで周囲の理解を得られず、とうとう倒れてしまいます。
一方、大学に進学した知花も孤独でした。授業で気遣ってもらえず、武明とデートの約束をしても彼は熱を出して倒れており、動転してしまう知花。
そして、武明は見舞いに来た母とともに沖縄へ帰ります。武明は最初、そのつもりではありませんでしたが、母親に「このままじゃ本当にだめになってしまう」と言われたのです。
久しぶりに再会した元野球部員たちも武明の事情に深刻な表情です。
沖縄へ帰った武明は、新城高校に転任した伊波監督に愚痴ってしまい、監督も「こんなことしか言えない先生を許してくれ」と言って武明を慰め、諭します。
もっとも、悪いことばかりでもありません。
光一が手術の後、ようやく走れるようになったのです。ちょっと明るい表情で海を見つめる武明と光一で、最終話の1話前が終わりです。

最終話は再び、知花。彼女は手話サークルの発起を呼びかけ、当初の参加者は1人だけでしたが、それがあの小沢妙子さん、琵琶湖のほとりに住む盲目のおじいさんの孫娘さんでした。ここの知花が福里、妙子ちゃんが琵琶湖のと明らかにされ、ようやく巡り会ったところがこの巻、最大の号泣ポイント。わずか数ページのやりとりですが、6巻から続く長い長い支援が、ようやく1つの決着を見るという、おじいさんの人柄もあって、ここ、たまりません。
しかも妙子ちゃんが知花ちゃんが不自由していた授業を手話で手伝ってくれるようになり、知花の世界が広がります。この友情も泣かせる。かつて(確か2巻か3巻)「手話が私たちを狭い世界に閉じ込めてしまう」と言っていた知花ちゃんの世界が手話によって広がっていく皮肉ですが、ここは素直に嬉し泣き。

そして、20歳になった武明たちが甲子園で同窓会をするシーンでおしまい。安永が、ネクタイ姿が板についちゃったところが微笑ましい。彼や健ちゃんは大阪や名古屋といった武明たちから遠い地方に就職したのですが、描かれてないんですが、ちょっと恵まれた、理解ある人びとが支えてくれる職場だったらいいなぁと勝手に想像してます。

山本おさむさんには「遥かなる甲子園」よりさらに危険な「わが指のオーケストラ」という漫画もあるので、続けて、そちらもレビューします。こちらは文庫で3巻と短いですが、その分、濃縮な味わい。

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